新・D方式への対応はできていますか? 指導料算定で100万円以上の増収も

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 DPCの点数設計方式は、AからDまで4つある。2018年3月までは、入院5日目までに該当の手術・検査を行った場合、短期滞在手術等基本料3があったが、2018年度診療報酬改定で廃止。以後、短期滞在手術等基本料3に該当する患者の報酬については、DPC/PDPS・点数設計方式Dにより算定することになった。

【図表1】 短期滞在手術等基本料3の手術・検査の算定イメージ



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【図表2】18年度制度改定よりD方式なったコード一覧


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 <点数設計方式Dに変わったことによる対応ポイント>
1. 薬剤管理指導料など加算、管理料、指導料も算定可能であり、パス対応が必要
2. 効率性係数の計算対象となるため、係数対策としての在院日数マネジメントが必須
3. 手術料が出来高請求となるため、手術請求できる注射などは手術請求が望ましく、手術加算も算定漏れに注意が必要

<分析条件>
■分析期間・対象症例:2018年4月~7月退院症例
■分析病院数:698病院
■分析対象:上述期間において、2018年度よりD方式になったコード症例を有する医療機関を対象とする

出来高算定できる加算、指導料、管理料は確実に
―薬剤管理指導料の算定状況ベンチマーク

 出来高算定できる加算、指導料、管理料の算定状況を推測するため、DPC病院における出来高算定の代表格である薬剤管理指導料の算定状況を比較した(図表3)。

【図表3】 薬剤指導管理料算定率ベンチマーク
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※2018年4月~7月 退院症例
※4月からD方式になったコード
※算定率=薬剤管理指導料算定患者÷症例数


 1入院が手術、加算など含めてほぼ包括的に評価される短期滞在手術等基本料3が制度化された際、算定できない薬剤管理指導を指導対象から外した病院もある。院内のマンパワーと必要性を天秤にかけた結果だ。

 しかし、ベッドサイドに行き、薬剤管理指導を行うことは、薬剤師にとって最も重要な業務だ。こうした直接業務だけでなく、間接業務も効率化して、薬剤管理指導を行っていくことが、病院の医療の質向上につながる。これまでの短期滞在手術等基本料3対象疾患については、パスに入れ込む等の対応が必要だ(各病院の算定率及び増収ポテンシャルは巻末資料に記載)。

 

 なお、薬剤師の生産性に関する分析は「病院ダッシュボードχ(カイ)」の「チーム医療Plus」で他病院と病床当たり薬剤師数、薬剤師1人あたり指導件数、薬剤師1人あたり算定金額が比較できるため、改善の検討に役立てていただきたい。

在院日数マネジメントも見直しが必要か
―在院日数比較

 「020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 あり 重症度等片眼」は、2018年度診療報酬改定で期間Ⅰ(1日)、期間Ⅱ(3日)、期間Ⅲ(30日)が設定された。18年4月以降の平均在院日数を見ると、8.2%の病院で在院日数最頻値が期間Ⅲになっている(図表4)。

【図表4】 白内障 在院日数最頻値ベンチマーク
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※2018年4月~7月 退院症例
※020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患 あり 重症度等片眼


 短期滞在手術等基本料3では1泊2日入院であっても、3泊4日入院であっても報酬が同じであるため、在院日数を伸ばす理由は一つもなかった。点数設計方式Dとなることで、2日目、3日目、4日目と低いながらも点数がつくことで、在院日数を伸ばし病床稼働率を高めて収益を上げようと考える病院もあるだろう。短期的に見れば稼働率が高まるものの、点数設計方式Dとなったことで効率性係数の計算対象となり、全国的に症例数が多く、平均在院日数が短い元短期滞在手術等基本料3の症例は効率性係数を押し下げる要因になる。

 ポリペク(「060100xx01xx0x 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 定義副傷病なし」)も同様のことが言える(図表5)。

【図表5】 ポリペク 在院日数の最頻値ベンチマーク
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※2018年4月~7月 退院症例
※060100xx01xx0x 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。)
内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 定義副傷病なし


貴院に求められる病床戦略・集患戦略とは

 また、現時点では元短期滞在手術等基本料3の症例は、重症度、医療・看護必要度の計算に入れなくても良いため、一般病棟に入院対応している病院も多い。今後、重症度要件のある急性期一般入院料等の病棟においては重症度評価対象に入れられることを見据えた病床戦略を考える必要がある。

 在院日数を短縮すると病床稼働率が確かに低下する。対応策として下記3つがある。
 ・同じ疾患の症例をより多く受け入れる(図表6) ⇒ 集患戦略
 ・より単価の高い疾患を受け入れる ⇒ 集患戦略
 ・一般病棟入院料算定病床以外で受け入れる ⇒ 病床戦略

【図表6】 在院日数短縮効果のイメージ 白内障 片目
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※1つの病床で6日間の場合の収益差
※短手3は在院日数3日、D方式は在院日数2日で運用と仮定
※D方式は日当点×係数(1.3)+手術料+加算(薬剤管理指導料2)


 短期滞在手術等基本料3の点数設計方式Dへの移行は、集患戦略、病床戦略を検討する上でターニングポイントとなっている。次の診療報酬改定までに適切な対応策を取らなければ、さらなる病床稼働率低下、1日単価低下による経営状況の悪化につながりかねない。集患戦略については、病院ダッシュボードχ(カイ)の「地域連携分析」などを参考に紹介患者像に向けての取り組みを、病床戦略については、地域包括ケア病棟などの有効活用を検討いただきたい。

解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

snakamura 社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。コンサルティング部門チームリーダー。豊富な社会保障制度の知識とコンサルタントの経験やノウハウを生かして、「メディ・ウォッチ」で積極的な情報発信をする。日本経済新聞や週刊ダイヤモンドなどメディアの取材協力も多数。


解説を担当したコンサルタント 岩瀬 英一郎(いわせ・えいいちろう)

snakamura 病床戦略、財務分析、地域連携支援などを得意とし、全国の医療機関で複数の経営改善プロジェクトに従事する。入退院支援センター開設支援(PFM:Patient Flow Management)のプロジェクトではリーダーを務める。