2018年度診療報酬改定は、病院経営に対して大小さまざまな影響を及ぼす内容が盛り込まれていた。その中で、より実態に沿った形で再評価したものもある。その一つが摂食機能療法だ。
摂食機能療法は従来、「30分以上」行わなければならなかったが、「30分未満」(摂食機能療法2※従来の30分以上は「1」)が新設された(図表1)。もう一つの変更点は、対象疾患が脳血管疾患等から脳卒中という記載になったことで、若干ではあるが疾患が制限された。また、カルテ記載項目が追加された(図表2)。
摂食機能療法は、リハビリテーションスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)だけではなく、看護師、准看護師、歯科衛生士などの職種も行うことができる唯一のリハビリテーションである。切れ目のない院内連携強化のため、20分1単位のリハビリ専門職から引き継ぐ形で看護師や准看護師、歯科衛生士が病棟で積極的に取り組みたいところだ。
今回は、摂食機能療法の早期実施が医療の質につながっているかを、2017年10-12月におけるメディウォッチ・ジャーナル登録のDPCデータの中から、誤嚥性肺炎で検討する(692病院 19,557症例)。まず、摂食機能療法を行っている症例割合は平均25.6%だったが、実施率0%の病院も204病院存在した(図表3)。前述したように、本療法は療法士以外の職種が実施できるリハビリテーションでもあり、多職種の主体的なかかわりが求められる。
次に、摂食機能療法実施症例に絞り、摂食機能療法の開始タイミングと在院日数との関連をみたところ、摂食機能療法をより早期に開始した症例ほど在院日数は短くなっていた(図表4)。在院日数の長短は、特に誤嚥性肺炎のような疾患では受け入れ先施設や家庭状況などの影響が大きいが、入院早期から経口摂取への可能性を探り患者家族とかかわることは在院日数マネジメントに大きく貢献することは間違いなさそうだ。
最後に、この摂食機能療法が仮に75歳以上の全症例に入院中毎日実施した場合、それぞれの施設でどれくらいの収益になるのかを試算した(図表5)。平均で年間480万円、多い施設では年間2,200万円のポテンシャルが算出された。経営的視点からも、大きなインパクトのあるリハビリテーションである。
今回取り上げた摂食機能療法の改定内容は、高齢患者が増える中での病床の高回転化と切れ目のない退院支援に向けて「より算定しやすくなった=医療の質向上のためにもっと積極的に算定しなさい」とのメッセージと言えるだろう。
日々の食事介助という行為の中で、実際には摂食機能療法と同様のことを看護師が行っているにもかかわらず、看護師にその認識がない、治療計画書がない、摂食初期機能検査を行っていない等、その理由ゆえに摂食機能療法を算定できていない症例が存在しないだろうか ?各病棟で「本日は○名の食事介助者がいる」ということを毎日共有できているだろうか? 今一度、各現場で確認していただきたい。
各病院の、誤嚥性肺炎における摂食機能療法を行っている症例割合、摂食機能療法の収益試算は下記を参照いただきたい。