DPC制度では、手術・処置・副傷病に応じて約5000のコードが設定されており、適切なコーディングは、症例の日当点だけでなく、複雑性やカバー率係数など、機能評価係数2にも大きな影響を与える。まさに「コーディングを制する者、DPCを制す」である。
DPCコーディングの中でも、特に、副傷病名の記載の有無は重要だ。近年、DPC制度では、定義副傷病コードが急増しており、副傷病名付けの重要性が増している。
本号では、コーディングの中でも副傷病名付けに着目して、副傷病名のポイントを整理し、今日からできる最適なコーディングを実現するための対策を提示する。
分析期間:2018年4月~9月 分析病院数:800病院
分析対象:上述期間において、副傷病分岐をしたDPCコードの症例(※出来高算定のDPCコードは除外)を対象とする
DPCコードは10年前からほぼ倍増、副傷病名の記載の重要性高まる
図表1は近年の診断群分類の見直しの流れをまとめたものだ。10年前に2400近くあったDPCコードは5000件近くまで倍増。一方、10年前に600近くあった傷病名(MDC6 桁)は現状、2割近く整理されて500前後になった。傷病名数が減少する一方、定義副傷病名の増加でDPCコードがさらに細分化され、DPC制度において、副傷病名記載の重要性が高まっている。
冠動脈ステント留置術 副傷病名の記載漏れで一症例で10万円の収益格差
ここで、具体的な副傷病名に関する事例を紹介しよう。
狭心症、慢性虚血性心疾患050050に付与されている定義副傷病名には、肺炎や尿路感染が設定されている。
まずは、副傷病名の記載の有無で、収益にどのくらいの差異が出てくるのかを見てみよう。図表2は副傷病名の有無の場合の収益差をDPCシミュレーションツール「ぽんすけ」で示したものである。
在院日数日の20病名なしでの点数を係数1として計算した場合、3万7390点に対し、副傷病名ありでは4万8016点となり、実に1万626点の差異になる。
副傷病名漏れ疑いの症例の見つけ方
図表3は実際の冠動脈ステント留置術の在院日数分布を示したものだ。パスで3~4日前後で管理されている症例がある一方、10日以上要している症例も一定数確認される。こうした事例は副傷病名の記載漏れの疑いがある。
このように在院日数分布から副傷病名漏れの疑いがある症例を探すことが可能だ。
炎症病名に敏感になろう
定義副傷病名として、どのような疾患に注意が必要なのだろうか。図表4にまとめた。
一番多いのが肺炎関連であり、次いで誤嚥性肺炎、敗血症、腎臓または尿路感染症と続く。共通しているのは、いずれも感染症であり、入院の主目的である治療の他に、感染症関連の治療を早期に把握することが大切である。
これらの病名をきちんと入力することが副傷病名コーディングを行う上で重要なポイントとなる。病名が入力されていない場合は、医事課や診療情報管理部門が、日々飛んでくるデータから医師へ積極的に問い合わせをする必要がある。
細菌培養・細菌同定検査、周術期抗生剤とは違う銘柄の抗生剤投与、胸部レントゲン実施などの感染症と思われる医療行為は、病名がついていない症例を見つけるポイントになる。
医師、看護師、MSW、退院調整関連職員、薬剤師、栄養士、リハビリメンバーと早期に情報を共有し、チームで動くことが重要だ。
貴院の副傷病名付けの状況を確認してみよう
では、定義副傷病名コーディングがどの程度行われているか、実際のベンチマークデータで確認してみたい。2018年4月~9月のベンチマークデータにて、脳梗塞、胆管結石における副傷病付けが行われている症例を示したものが図表5、6である。
脳梗塞、胆管結石は肺炎や敗血症が代表的な副傷病名となる。病院間で副傷病名の割合には差異があり、病院間で病名付けの状況が異なることが確認できる。
図表7は全疾患における副傷病名コード割合を示したものだ。巻末資料
で貴院の実際の割合を確認できる。病院間で疾患構成の違いはあるが、副傷病名への取り組みの状況が確認できる。図表7で立ち位置が右側にある病院は副傷病名付けに課題があることが考えられる。
貴院で症例数の多い疾患から、個別のコードにおける在院日数分布から、在院日数が長期化している症例の病名付けを確認することから初めていただきたい。