知らないと収益半減、認知症医療の質と経営を向上させる盲点は「算定密度」

 2018年度診療報酬・介護報酬改定の最新情報が続々と出てくる中、今回は「重点分野・個別分野にかかる質の高い医療提供の推進」項目に明記されている、認知症への質の高い医療推進に関連した「認知症ケア加算」に焦点を合わせる。

 「認知症ケア加算」は2016年度診療報酬改定で新設されたものであり、算定要件、施設基準等詳細は図表1のとおりだ。この加算の経営的な重要ポイントは、加算算定日数に上限がなく、入院中は継続的に算定できるという点。したがって、該当症例をどれだけ算定していることを示す「算定率」はもちろん、入院日数に対して何日間算定されているかを示す「算定密度」(入院1日目から退院までの連日算定日数)も重要であり、この2つが今特集の論点となる。

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【分析条件】

  • N=629病院
  • データ期間:2017年1~3月
  • 対象症例:様式1「A004010:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」が「2(ランクⅢ以上)」の症例
  • 算定率:認知症ケア加算算定症例数(身体拘束ありを含む) ÷ 対象症例数
  • ※算定密度:14日以内の認知症ケア加算算定日数合計(身体拘束ありを含む) ÷ 対象症例の14日以内の入院日数合計(在院日数が14日以上の場合は14日で計算)

 各医療機関の算定状況はどうだろうか。図表2では、縦軸に算定率(様式1「A004010:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」が「2(ランクⅢ以上)」の症例に対する認知症ケア加算算定症例割合)、横軸に算定密度(14日以内の認知症ケア加算算定日数合計(身体拘束ありを含む)に対する、14日以内の認知症ケア加算算定日数合計(身体拘束ありを含む)割合)を示している。

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 全体の傾向としては、算定率と算定密度は比例している。まずは、対象症例に対してしっかりと算定することからスタートしよう。ただしA群のように算定率も算定密度もほぼ100%という医療機関がある一方、B群のように算定率は90%前後と高いが算定密度が50%前後というグループも存在する。

 算定率・算定密度を上げるためには、3つのチェックポイントがある。以下をご確認いただきたい。

  1. 入院1日目に認知症高齢者の日常生活自立度判定が徹底されているか
  2. 入院1日目に看護計画立案がなされているか
  3. 本加算が医事データとして確実に算定されているか

 加算1の場合、1日1500円、14日間で2万1000円が算定できる。今回、分析した医療機関で最大対象年間換算数は1728例。全員が14日以上入院と仮定した時の最大収益は3600万円。しかし算定密度が50%にとどまれば、半分の1800万円しか算定できないことになる。

 厳しいといわれている2018年度の次回改定においても、認知症対策は引き続き強化される分野である。認知症患者に入院早期から関わることで、医療の質を向上させ、退院支援を促すことを評価する認知症ケア加算は、経営視点でも極めて重要である。自院の状況(数値)を確認し、算定率・算定密度双方の向上に向けて院内でご検討いただきたい)。

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解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。