2018年6月20日に、全国DPC病院の機能評価係数IIが公表された。今年3月のワンポイントレッスンでも掲載したが、今後の急性期病院にとって非常に重要な視点であるため、改めて「機能評価係数II」を取り上げていく。係数を正しく理解し、機能評価係数IIアップのために、具体的にどういったアクションをとればいいのか。「病院ダッシュボードχ」の機能評価係数II分析を使いこなすことが、その一番の近道。本稿では「複雑性係数」を取り上げる。
まずはロジックについて理解する
複雑性係数は、その名前から「複雑な診療をしている病院ほど高くなるのでは?」と思われることが多いようだが、1入院の包括範囲出来高点数を、同じDPCの全国平均に置換え、その点数を比較している。ここで1点強調したいのが、包括範囲出来高点数を評価しているという点だ。包括範囲というのは、DPCで包括になる範囲のことであり、主には投薬・注射・処置・検査・画像・入院料だ。ここに手術は含まれない。つまり、術式の手技料といった項目は、複雑性係数では評価されないのだ。
事例で簡易的に説明したい。A病院では➀虫垂炎を100人・1入院20万円②白血病を10人・1入院20万円で診療していた。通常計算は、1入院当たりの包括範囲出来高金額は、(①虫垂炎100人×20万円+②白血病10人×20万円)÷合計症例数110人で20万円となる。複雑性係数では、各疾患の包括範囲出来高点数が、全国平均に置き変わる。全国平均医療費は虫垂炎が10万円、白血病が50万円としよう。A病院の複雑性係数で評価されるのは(➀虫垂炎100人×1入院全国平均10万円+②白血病10人×1入院全国平均50万円)÷110人で13.6万円という数字なのだ。実際の20万円よりも、低く評価されてしまう…ということになる。一方、B病院での複雑性係数は、30.0万円と計算される。
つまり複雑性係数は、DPC日当点が高い疾患群を、いかに多くみているかが重要だ。複雑性係数を上げるためには、「より日当点が高い疾患を、多く診ればいい」ということになる。だが、「血液内科系疾患や悪性腫瘍疾患の高額薬剤使用症例を、当院でも診療していくか」等、疾患構成に関する検討は容易にはできないだろう。現在「機能評価係数II」の「複雑性係数」分析では、「副傷病の症例割合」を他病院と比較している。大半のDPCコードにおいて、副傷病分岐ありの方がより日当点が高い。また病名記載漏れなどで「うっかり」低いDPCコードになってしまっていることも多い。つまり他病院ベンチマークを通じて、確実に「今日から」の取り組みが可能であり、コーディング精度もアップして一石二鳥なのだ。
分析してみよう!
下記はGHC病院の副傷病の割合を、他院と比較したものになる。5番目の胆嚢炎と、6番目の結腸癌についてみていただきたい。
胆嚢炎は他院副傷病割合2.4%と高くはないが、自院は0.0%。1症例もいないのである。表をクリックすると、施設別ベンチマークが可能だが、半数の施設では副傷病分岐ありの症例が発生している。
診療科医師が、何の疾患で副傷病分岐ありとなるかを把握しておらず、1症例もいない可能性がある。DPC制度検索ツール「ぽんすけ」で何が副傷病になるかをチェックすると、「肺炎」「誤嚥性肺炎」「尿路感染症」「胸水等」等が副傷病分岐ありとなることがわかる。
医師に、「〇月以降の胆嚢炎の患者さんで、肺炎や尿路感染を合併した患者は、いなかったですか?」と聞いてみよう。「いたよ」と言うのであれば、医師にレクチャーが必要だ。また、単にコーディング部隊のミス、ということもあるため、医事にも共有した方が良いだろう。
次に結腸癌をみていこう。結腸癌は他院に比べ7.2%低い。胆嚢炎のように1症例もいないというわけではないので、何の疾患で副傷病分岐ありとなるかを誰も知らないということはないだろうが、知っている医師と知らない医師がいるかもしれない。こちらも施設別ベンチマークを行うとかなり割合が低いことがわかる。
「ぽんすけ」で副傷病を確認すると、「肺炎」「誤嚥性肺炎」「尿路感染症」「敗血症」「骨転移」「腹膜炎」「腸閉塞」等が対象となる。この分析結果と副傷病リストをもって、同様に医師と医事に確認をしていこう。何か理由があって、適切にコーディングされていない可能性がある。
今回紹介した「機能評価係数II」には、他にも効率性係数や救急医療係数、カバー率係数を網羅している。どれも弊社がロジックを理解したうえで、ソリューションに直結する分析機能となっている。機能評価係数IIの重要性が2018年度改定でもさらに高まっていることも受け、是非積極的に活用してほしい。
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