DPC委員会の資料を作ろう!

DBχワンポイントレッスン用見出し

 2016年診療報酬改定で、DPC対象病院は、適切なコーディングを行うための体制強化の目的でコーディング委員会の開催が年2回から4回に引き上げられました。本委員会は、「コーディング委員会」、「DPC委員会」と呼称は様々ですが、部位不明・詳細不明コード等コーディングに関する検討を中心にDPC全般の討議をする医療機関が多いようです。今回は、これら委員会の資料を効率的に作成するヒントをお話しましょう。ポイントは3つです。

POINT1:いきなり”個別症例探し”はしないようにしましょう

・資料作成担当者の業務負担軽減のコツは全体把握から入る、を意識しましょう。
・病院全体>診療科別>疾患別>症例別 とドリルダウンしていくことがポイントです。
・ただし、大幅減収した症例(不適切コーディングの場合がある)の要因については検討しましょう

POINT2:目的を定め、担当者を決め、成果報告を行いましょう

・分析や報告の目的を意識しましょう
・診療報酬の多寡を議論する場ではありませんが、増収金額や割合等の「数字」が成果指標のひとつとなります
・改善内容や対策を決めた場合、必ず担当者を決め、定期的に成果報告を行いましょう

POINT3:院内共有を意識しましょう

・DPC委員会参加メンバーはある程度の知識が必要ですが、DPC制度に詳しくないメンバーも多いです。
・全体感>数字を意識>ポイントを絞り>簡潔な内容を心がけましょう。
悪い例)「病名記載を徹底してください」⇒×抽象的で、アクションに結びつきにくいです。
良い例)「肺炎・認知症・糖尿病がある場合は、必ず記載してください」⇒〇記載漏れの多い疾患に限定し、アクションの徹底を促しましょう。

 以下で取り上げたのは、多くの病院で対策を講じている機能評価係数Ⅱの中の効率性係数向上に向けての資料例です。

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1. 全体感:DPC制度における収入構造
      多職種が参加するため、基本的な制度の理解も重要です。
2. 数字感:取り組みに対するポテンシャル・見込み
      これから取り組みを行う課題のインパクトを共有します。
3. 評価されるDPCデータ期間
      前提条件について整理をします。     
4. 他病院比較による現状の可視化:「係数分析」>「機能評価係数Ⅱ」>「俯瞰マップ」
      係数の全体感を把握し、自院の特徴を振り返ります。
5. 他病院比較による本係数の特徴:「係数分析」>「機能評価係数Ⅱ」>「効率性係数」
      効率性係数の意味を理解します。
6. 係数向上に向けての方策
      分析のポイントについて理解します。
7. 課題となる疾患の抽出:「係数分析」>「機能評価係数Ⅱ」>「効率性係数」
      係数向上に向け、どの疾患に対して優先的に対応すべきかを検討します。
8. 課題となる在院日数の見える化:「係数分析」>「機能評価係数Ⅱ」>「効率性係数」
      外れ値の存在や、在院日数のバラつきなど、疾患別に原因を特定します。
9. 取り組み成果:「係数分析」>「機能評価係数Ⅱ」>「効率性係数」
      取り組みを行い、改善した成果を検証し、また次の課題解決へとつなげます。

 DPC委員会は、コーディングにかかわる項目のみならず、急性期病院としての目指すべき姿を目指して多職種がかかわる機会です。資料作成にかかる業務を効率化し、ただ単なる報告会で終わるのではなく、PDCAサイクルの成果が実感できるような委員会を目指しましょう。

 病院ダッシュボードχで学ぶ「GHC病院経営データ分析塾」では、2019年6月に「DPC委員会」をテーマに、勉強会を行いました。各病院がどのような回数・内容・参加者で委員会を運営しているか、運営に関する意見交換を行っています。今後も「パス委員会」などの、病院での定例会議をテーマに勉強会を行いますので、ぜひ他病院との事例共有の場・委員会のあり方を見直す機会として、ぜひご参加ご検討ください。

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

snakamura テンプル大学教養学部経済学科卒業。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。全国の医療機関のコンサルティングを務め、改善事例多数。コンサルティング部門のチームリーダーのほか、若手の育成や人事担当なども務める。「LEAP JOURNAL」担当責任者。