増税対応? 10月の係数見直し、なんのため?

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 DPC対象病院では例年、2月初旬に次年度の機能評価係数IIの内示があり、年度が切り替わると同時に、新しい機能評価係数IIがスタートします。ところがこの7月、次年度の機能評価係数IIの評価期間(10月~翌年9月)にもかかわらず、異例の機能評価係数II(および基礎係数)の見直しに関する内示がありました。DPC対象病院は10月から、新たに内示を受けた内容に機能評価係数IIが置き換わります。

 皆さん、この異例の機能評価係数IIの見直しについて、どのように感じましたか?

 基礎係数はアップし、機能評価係数IIはダウンしました。医療機関群で基礎係数のアップ幅が異なったことにより、基礎係数+機能評価係数IIの合計は、群間で差が出ました。大学病院群は大きくダウン、DPC特定病院群は若干ダウン、DPC標準病院群は少しだけアップ――になりました。ただ、これから機能評価係数Iや包括点数が出るので、トータルとしてどうなるのか分かりません。

 しかし、そもそも今回の係数見直しの意味は何だったのでしょうか?私は今でも納得できていません。

 増税対応だとすると、ダウンということはあり得ません。そもそも課税対象とは最も遠い位置にある係数を触ること自体がおかしいためです。増税対応であるならば、すでに議論されていた通りに機能評価係数「I」と包括点数だけを触れば良いことです(入院料に関わる部分なので)。

 もしくは増税に伴う「改定」だったとしたらどうでしょう。この方がさらに納得できません。なぜなら、基礎係数ならまだしも、機能評価係数IIは「病院の通信簿」だからです(関連記事『病院の通信簿』)。改定であるならば、病院の個別評価である機能評価係数IIは計算し直し、相対的に評価すべきです。しかし、今回の内示においては、群間に関係なく、一律3.7%ほどのダウンでした(若干の差はありますが、誤差範囲です)。割合が同じなので、元々係数が高かった病院ほどダウンの影響を大きく受けました。これでは病院の通信簿として機能していないと言わざるを得ません。

 そもそも、アップしようがダウンしようが、基礎係数と機能評価係数IIをこのタイミングで触ること自体が納得できません。DPCの歴史の中で、ここまで納得性が低い事象は、私の中では初めてです。

 ただ、嘆いていてもはじまりません。すぐに次の評価期間(2019年10月-2020年9月)が始まります。現行の評価期間で出てきた反省を生かし、病院全体で取り組むべき事項を議論し、邁進していきましょう。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

snakamura 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。
早稲田大学社会科学部卒業。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、GHCが主催するセミナー、「病院ダッシュボードΧ」の設計、マーケティングを担当。若手コンサルタントの育成にも従事する。