マイナス改定の影響は?2016年度上半期を効率的に評価する手順

 マイナス0.84%の厳しい改定率だった2016年度診療報酬改定。新制度スタートから半年が経過した。厚生労働省に7月~9月までのデータ提出が済んだ今回は、2016年度上半期の状況を振り返る手順をお伝えする。

全体俯瞰から深掘りへ

図表1

図表1

 使う機能は、「DPC俯瞰マップ」の「自病院分析」。まず、検索条件を「(1)2016年4月~9月」「(2)2015年4月~9月」として、経年比較を行う(図表1)。ぱっと見て傾向を把握しやすいのは、表よりもレーダーチャートだろう。今年度は赤色、昨年度は青色で表示されるので、赤色が青色よりも外側に表示されていれば改善したことを意味している。図表1の医療機関では、平均在院日数は短くなったものの、入院期間II超割合はあまり変化がない。医療資源の使い方は、昨年よりも投入量が多く、医療資源の効率化が進んでいないことが示されている。

図表2

図表2

 レーダーチャートよりも詳細な項目も比較できる(図表2)。月平均症例数は365症例から362症例とわずかに減少したものの、ほぼ横ばい。しかし、平均在院日数が16日から14.1日と約2日短くなったことで、DPC収益が約1億円減収した。昨年、この医療機関は地域包括ケア病棟を開設したため、この減収分をどのくらい地域包括ケア病棟でカバーできているのかを検証する必要がある。多くの医療機関で地域包括ケア病棟のターゲット診療科と言われている整形外科の平均在院日数は、24.8日から16.2日と8日も短縮している。入院期間II超割合も約20ポイント低くなり、1日単価も1万円以上向上、より急性期指標に近づいてきた。

図表3

図表3

 薬剤料、材料料(償還価ベース)の金額比較も押さえおこう(図表3)。循環器科は月平均7名も患者が少ない一方、材料費が1200万円多くなっている。併せて、収益構造の中に占める割合が高い手術情報(手術症例割合は同程度だが手術単価が15万円アップなど)も加味しながら、診療科単位からDPC単位まで落とし込んで検証することができるので深掘りが必要だろう。

改定の重要論点のチェックを忘れずに

 最後に、救急への取り組みをきちんと押さえることが重要だ。前年度は26%だった緊急入院率が今年度は20%を割っている。救急への取り組み強化は、救急医療係数に関与するだけではなく、今回の改定で看護必要度A項目にも「救急搬送の有無」が追加されたことにより、7対1入院基本料の届け出維持にも直結する。

 今回は2016年度上半期を前年同期間と比較する手法を紹介した。病院ダッシュボードは任意の期間を簡単に比較することができる。ひとつの項目の比較だけではなく、複数の項目を抽出したり、疾患単位まで深掘りしたりすることにより、より現場感覚に近い多角的評価に役立つ。

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。