経営改善の最重要課題をすぐに把握できる
3つの切り口、「DPC俯瞰マップ」の活用手順

DBχワンポイントレッスン用見出し

 今回のワンポイントレッスンでは、昨年12月に大幅刷新した「病院ダッシュボードχ(カイ)」について、病院全体の入院指標の詳細を把握できる「DPC俯瞰マップ」について紹介する。

 DPC俯瞰マップ機能には、(1)自病院分析(自病院の2つの期間を比較する)(2)ベンチマーク分析(同類型や同規模など比較条件を満たす他病院と比較する)(3)重症指標詳細分析—の3つの機能がある。以下ではそれぞれの機能を解説する。

(1)自病院分析

 まず、添付のような形で、ある特定の分析したい期間(または月)を選択。「年月1」に過去の比較対象期間を、「年月2」に比較したい直近の期間を選択する。

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 選択後、重要指標として6つの指標がグラフ化される。事例のグラフでは、

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という状況だ。

以上の症例と在院日数の状況から、「稼働は向上している」と考えられる。しかし、手術単価がアップし、救急が増えたにもかかわらず、1日単価が減っている。手術症例の割合をさらに検証する必要はあるが、1日単価減少に大きな影響を与えているのは在院日数が延伸している場合が多い。

 さらに、医療資源(治療に費やす投薬、注射、処置、検査、画像。おおよそDPCにおいて包括になるもの)も増えていることから、収益性も心配だ。

 上記の課題をより詳細に把握するため、診療科さらにはDPCコード別に検証する。

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 詳細分析では、診療科別やDPCコード(先頭2桁、6桁、全コード)別に掘り下げて検証することができる。診療科別やDPCコード別の分析を行いたい場合は、上段で診療科を選択する。

 本稿の分析で活用したダミーデータでは、手術症例の割合に変化はなかった。病院全体の1日単価が下がったのは、消化器科、循環器科、外科の最も症例数が多い上位3診療科で、軒並み在院日数が2-3日伸びたことが主因であった。

 症例数が増え、更に在院日数が延びたことで稼働は上がり、短期的には総収益が伸びたと言える。しかし、長期的な視点に立つと、「在院日数の延長は急性期病院として重要な重症患者割合の低下や効率性係数の低下をもたらす」可能性もあることを考慮に入れる必要があるだろう。

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(2)ベンチマーク分析

 ベンチマーク分析では、同じ設立母体や同規模の病院との比較が可能である。病院ダッシュボードχへの刷新において、絞り込み機能に「厚生局」を追加した。これにより、「査定の地域格差」の問題を少しでもクリアカットできることを期待している。特に加算分析ができる「チーム医療plus】において、本絞り込み機能をフル活用できるのではないだろうか。

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 従来の病院ダッシュボードのベンチマーク分析では、GHCが保有する全病院の平均値との差や偏差値で自病院の立ち位置が分かる分析結果を示していた。さらに病院ダッシュボードχでは、病院それぞれの数値を横並びにしたうえで、ダイレクトに自病院がどの立ち位置にあるのかを把握できるようになった(図5)。

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 図5のそれぞれのベンチマーク分析結果に表示されている3本のラインは、上から「上位25%ライン」「中央値ライン」「下位25%ライン」となっている。これにより、「うちの診療科は他病院の同じ診療科と比較してどうか」が一目で分かる。目標設定において、従来のような「前年と比較して○%アップ」ではなく、「同規模他病院と比較してこのポジションになる」というわかりやすい目標数値を定めることが可能となる。

 自病院の立ち位置(青い棒)は、どこにあるだろうか。そして、目標をどの位置にすべきだろうか。院内でしっかりと検討していただきたい。その上で、医療資源を適正にするためには「パス分析」に、チーム医療を推進させて加算収益を向上するためには「チーム医療plus」に、外来の適正化をするためには「外来分析」にそれぞれ落とし込んでいくといいだろう。

(3)重要指標詳細分析

 ここでは自病院症例数および1日単価・期間II越割合の推移、予定入院の割合ベンチマーク、手術割合ベンチマーク等病床運営の重要な指標をグラフ化している。

 例えば、予定入院と予定外入院の割合を見てみよう。積極的な救急医療の提供は地域医療を支える優先順位の高い使命の一つではあるが、救急は「水もの」と言われるように不安定な病床管理を余儀なくされる。安定した病院運営を行うためには、「予定入院をいかに増やすか」という視点が非常に重要だ。

 では予定入院を増やすためにはどうすべきだろうか。重要なのは地域連携である。地域連携を推進するためには自病院を知り、他病院を知る必要がある。周辺の医療圏の病院・患者動向を分析できる「マーケット分析」に落とし込み、地域連携を戦略的に計画していくとよいだろう。

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 「病院ダッシュボードχ(カイ)」による病院分析は、トップ画面とDPC俯瞰マップからスタートする。まずはここから経営向上のステップを積み上げていって欲しい。