2020年度診療報酬改定まで残すところ約半年となった。
病院を取り巻く環境が変わる中で、次回診療報酬改定においても、各病院の在り方が問われることは間違いない。
本号から2回にわたり、各病院における病床機能の運用状況を把握していく。現在保有している病床機能を最適に運用できているかを確認することで、自院にとって真に必要な病床機能を検討していただきたい。
本号では、まず各病院の高度急性期部分である特定集中治療室(ICU)、ハイケアユニット(HCU)について分析する。
ICU・HCUを保有している病院数
図表1は2019年6月時点で厚生局に届出がある「日本の全病院」におけるICUとHCUの保有病院数である。ICUでは管理料3が最も多く355病院、HCUでは管理料1が最も多く530病院であった。この保有状況が適正か否かは各病院が置かれている外部環境(周辺の病院の保有状況)・内部環境(疾患構成や運用ルール)によることは言うまでもない。本分析では、自院の中で検討することができる内部環境(疾患構成や運用ルール)について取り上げていく。
データ期間:2018年4月~2019年3月退院症例
対象施設数:877病院、HCU:310病院、ICU:359病院
ICU=2.9日、HCU=3.3日が中央値
まずは、各病院の各ユニット管理料算定日数について確認する。なお、本分析では管理料算定を基準として分析しているため、入室はしているが一般入院基本料を算定している症例や日数については考慮しない。
ICUは、中央値が2.9日であり、2.5日~3.5日の間に半数の病院が位置する結果となった。一方で、4日超や2日を下回る病院も確認でき、運用状況は病院によって大きく異なることが示唆された。
HCUは、中央値が3.3日であり、2.4日~4.0日の間に半数の病院が位置する結果となった。ICUと比較すると病院間での差はさらに大きいことがわかる。
ICU・HCUに最も入室しているDPCは「肺の悪性腫瘍・手術あり」
運用状況に違いが発生する要因の一つに、どのような疾患を入室対象としているかが挙げられる。
DPCコード別に各ユニット管理料算定症例数を確認したところ、ICUとHCUともに最も多くの症例数が入室しているDPCコードは「040040xx97x0xx;肺の悪性腫瘍 あり 手術・処置等2なし」だった。(図表4、5)
これは多くの病院で、手術後管理のための入室が多いことが要因と考えられる。手術後管理入室はパス運用しやすいため、ルールさえ決めてしまえば運用は比較的容易である。手術後管理をICUやHCUで実施した方がよいと考えられる手術について、入室ルールが定められておらず運用が徹底できていない症例がいないか確認したい。
各病院で運用が異なる疾患を比較
入室症例数が多い疾患の中で、各病院の運用に差が確認できた疾患を例に挙げ、運用状況について確認する。ICUでは、「050080xx01010x;弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1なし 手術・処置等21あり 定義副傷病なし」を取り上げる。ICUを保有する病院における同疾患の平均入室率は90.8%。非常に高い割合で入室させているが、日数については2日を下回る病院から6日以上の病院までなだらかに分布している。(図表6)当該DPCコードのバラつきについては、入室率を見てもわかる通り入室基準の影響は小さく、退室基準による影響が大きいと考えられる。
HCUでは、平均入室率は14.4%の「050130xx99000x;心不全 なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 定義副傷病なし」を取り上げる。在室日数も1日から7日以上まで幅広い(図表7)。当該コードについては、内科系疾患ということもあり、各症例によって在室日数が変動することも要因として挙げられるが、そもそも入室基準と退室基準の両方が明確になっていない病院も多いのではないだろうか。
運用を見直すことで機能を適正化
今回言及したICU、HCUは特定入院料も高額なため、限られたユニット数の中で、医学的に優先順位の高い症例を入室させることが重要だ。ICU、HCUにどのような疾患をどの程度入室させるかを改めて設定し直すことで、自院の保有すべき機能を検討していただきたい。
巻末に、他院と同程度の運用をした際の金額的なポテンシャルも掲載する。
すでにユニットを保有している病院については、保有病床数が不明のためポテンシャル算出に当たり稼働病床の上限は設定していない。ユニットを保有していない病院については、前述した弁膜症と心不全について、他院と同程度の運用をした場合、ユニットがあったと仮定した際のポテンシャルを算出している。医療の質と経営の質の両側面から、最適な病床機能検討の一助にしていただきたい。