もう抜き打ち検査は怖くない、3ステップで理解できる看護必要度データ精度向上の手順

6月初旬、全国の急性期病院のHファイルとDPCデータとを紐づけてチェックし、当局が再提出を求めてきたことは記憶に新しい。結果的に不問となったとはいえ、修正期間10日で、5,000件、2万件、中には10万件以上の再確認・修正命令を要請された医療機関もあり、2018年度の次回診療報酬改定に向けて改めて「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)のデータ精度を高める必要性が増していると言えよう。

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改めて、DPCデータと看護必要度データの関係を整理してみよう(図1)。それぞれのデータの有無で4象限に分けたとき、DPCデータはあるが看護必要度データがない青色の象限と、必要度データはあるがDPC請求データがない赤色の象限という、凸凹状態の把握と改善が問われることになる。実際の医療行為で確認すると図2のような状態だ。

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データ精度向上に向けたステップ1

データ精度向上に向けては、全体を見て自院の特徴を掴み、病棟別、診療行為、日数、患者別と分析の階層を変えていくとPDCAサイクルが回しやすい(図3)。

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まずデータ精度が高い項目、低い項目を把握すること。図4の病院では、創傷処置、呼吸ケア、心電図項目の一致率が低い。他病院とのベンチマーク情報があるとより客観的に評価をすることができる。

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データ精度向上に向けたステップ2

次に日数による評価の把握をすること(図5)。医事請求データの状況・看護必要度データ採点の状況について凸凹を概観したとき、特に入院1日目に着目してほしい。例えば、1日目の創傷処置では看護必要度データは31人分チェックされているが、医事請求データには2人分しか反映されていない。1日目の心電図も100名分以上のデータの差異が確認される。また、救急搬送評価のA8項目の3日目はゼロでなくてはならないのに3日目が180人、4日目が80人・・・と2週間にわたり評価がなされていた。

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データ精度向上に向けたステップ3

他職種他部門へ働きかけること。概して、創傷処置の一致率は多くの病院で他項目と比べて低い。この要因のひとつに医師単独回診に対する情報共有の不足があげられる。本来であればチーム医療としても医師ち看護師が一緒に回診を実施することによって、創傷状態の把握、医師が患者にどんな説明をしているのか、患者の反応はどうかなどを共有する貴重な機会であるはずだ。しかし現状では各職種の訪室しやすい時間帯で実施しているため情報の共有を妨げている可能性がある。医師と一緒の回診強化もデータ精度向上への一歩になる(図6)。

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病院ダッシュボードの看護必要度分析機能では、自病院分析、A項目・C項目分析、症例別分析、データ精度適正化分析、他病院とのベンチマーク分析と各分析粒度に合わせて現状を可視化することが可能だ(図7)。看護部のみならず、診療部、薬剤部、救急部、手術部等病院全体での共有化に向けて活用していただきたい。

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解説を担当したコンサルタント

塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。