できるデータアナライザーは俯瞰の初動が違う、病院経営改善の第一歩

DPC データ、手術データ、外来データ、財務データなどさまざまなデータが院内には在している。病院経営には「現状把握⇒原因の特定⇒カイゼン策の検討⇒実行」が必要だといわれているが、医事課、診療情報管理室などに配属になったときに何から手を付けていいのか迷うのではないだろうか。知識のある部分から取り組む、目先の課題から取り組むのも一つの方法ではあるが、長期的な改善を行う場合には、スタートラインをどこに置くかが効率的に時間を使う上で重要である。

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現状を把握するためには、まず財務状況を把握してみよう。固定費が高すぎて利益が出ない構造になっていないか、変動費が急速に高まっていないかなどを把握しておこう。

その上で病院経営を改善していくためには、医業収益をどのように伸ばすかに行きつくだろう。医業収益は入院と外来に分けられるが、平均的に7~8 割が入院収益で、その他が外来収益である。自院の入院収益、外来収益の割合がどの程度か、経年変化ではどうかを確認し、インパクトが大きいところから取り組んでいくべきだ。

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もっとも入院収益に目を向け、財務諸表を読み込んだだけでは、どのように入院収益を分析すべきかがなかなか見えてこない。基本的なDPC 分析ツールを用いれば、自病院の症例数、平均在院日数、対出来高増減収金額、コーディングなどは把握できる。しかし、ベンチマーク分析を用いて、他病院の状況を把握して上で主要指標を確認しなければ、どこに課題があるかが見えてこない。森を見た上で、枝葉の改善に落としていく過程において、「森(俯瞰状況)を何でどのように見るか」が、スタートラインにおいて非常に重要である。

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病院ダッシュボードでは、トップページおよび俯瞰マップで、森(俯瞰状況)を把握できる。各指標は大きい方が良いもの、小さい方が良いもの、病院の方向性によっては数字の大小の意味付けが異なる指標がある。下表を参考にし、実現可能性の検討は後程検討するとして、まずは貴院の課題を書き出してみよう。

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分析に迷った時には、「俯瞰状況に立ち戻り、再度課題を洗い出してみる」というプロセスを繰り返すことで、徐々に本質的な課題に近づいていける。「なぜ、その課題に取り組む必要があるか」は、実際に相談を持ち掛ける部署に対しても説明する必要がある。「病院ダッシュボード」は分析の流れに沿った作りになっているため、俯瞰状況を把握した後の「原因の特定」に時間を割くことができる。「どのデータを見たらよいか」に時間を使わず、「見えているデータをどのように解釈したらよいか」に時間を使うことが、優れたデータアナライザーになるための次の一歩となる。

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解説を担当したコンサルタント

湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。