新設加算やDPC疾患別分析など16年度制度で分析可能に、各種機能をバージョンアップ

 2016年度診療報酬改定を経て、各病院による2016年4月以降のデータ提出が始まった。「病院ダッシュボード」でも順次、改定に対応したバージョンアップを進めている。7月のバージョンアップでは、2016年度制度でのDPC疾患別分析や新設された各種加算の分析が可能になった。点数や入院期間に関しては、すべて2016年度制度の数値に対応している。今回は、バージョンアップした各種機能のポイントを紹介する。

【全分析機能対象】検索項目が充実!!

 まず、診療報酬改定と直接の関係はないが、多くの要望をいただいていた検索項目について。今回のバージョンアップで、各機能の検索項目は「DPC病院群」「がん拠点区分」を選択できるようになった。さらに、検索項目は複数選択が可能になったので、今まで以上にベンチマーク対象を絞り込みやすくなった。

(図1)検索項目の充実

(図1)検索項目の充実

DPCケース分析

 これまでの診療報酬改定同様、DPCコードごとの日当点・分岐は、厚生労働省が集めた全国のデータの統計結果である。今回はCCPマトリックスの導入もあり、DPCコードは煩雑化した。しかし、「DPCケース分析」では、GHCのコンサルタントが各DPCコードで主要な疾患を定義し、疾患別に分析をまとめているので、今まで通り分析をしていただくことができる。例として、CCPマトリックスが導入された肺炎の定義を図2に示す。

(図2)DPCケース分析「肺炎」の定義

(図2)DPCケース分析「肺炎」の定義

チーム医療plus

 今回のバージョンアップの目玉は、なんといっても新設された加算のベンチマークができる点である。2016年度制度で分析できる加算は図3の通り。「認知症ケア加算」や「退院支援加算」、「薬剤総合評価調整加算」などの新設加算について、2016年4月以降、どのような病院がどの程度算定しているのか比較することが可能だ。図4は、2016年4月~6月の認知症ケア加算(1と2を含む)の算定割合をベンチマークしたものである。分母に『様式1の「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」におけるランクIII以上に該当する症例』を取り、そのうちの算定症例割合を算出している。届け出をして、実際に算定している病院が38病院(GHCデータベースの約8%)とまだそれほど多くはないが、既に該当症例にはほとんど介入が出来ている病院も見られる。

(図3)チーム医療plus 2016年制度目次

(図3)チーム医療plus 2016年制度目次

(図4)認知症ケア加算ベンチマーク(2016年4月~6月)※16年8月現在

(図4)認知症ケア加算ベンチマーク(2016年4月~6月)※16年8月現在

 いよいよ2016年度の新制度でベンチマークできる環境が整った。自病院が診療報酬改定の波に乗れているのかと同時に、他病院と比較してどのような立ち位置にいるのか、改めてダッシュボードを用いて分析していくことで、来たる2018年度の大改定に向けた下準備にできるだけ早く取り組んで欲しい。病院ダッシュボードは今後も機能の充実・改善に努めていく。直近では10月までに公表が必要な『病院指標』について、厚労省の定義に準拠した計算になるよう調整をして、リリースする予定である。

解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、済生会宇都宮病院(事例紹介はこちら)、さいたま赤十字病院(事例紹介はこちら)、広島市立安佐市民病院(事例紹介はこちら)、相澤病院(事例紹介はこちら)、旭川赤十字病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(関連記事はこちら)など雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。