外科系パスを見直そう①~腹腔鏡下胆嚢摘出術~

DBχワンポイントレッスン用見出し

 クリニカルパスは、医療の質を担保するためのツールのみならず、病院経営の改善推進においても欠かせないツールになっています。DPC病院においては、DPCの仕組みを理解した上で、「DPCに対応したパス」を作成し、定期的に検証して改善していくことが重要です。今回は多くの急性期病院で症例数の多い消化器外科の腹腔鏡下胆嚢摘出術を例に、パス分析の手順を見ていきましょう。

STEP1:検索条件を設定する

 「パス分析」>「おすすめケース」>「手術系」と進み、「腹腔鏡下胆嚢摘出術」を選択します。医療資源病名の違いによって「胆嚢水腫、胆嚢炎等」と「胆嚢疾患、胆嚢結石等」に分かれますが、症例数の多い方を選択します。

図表1 「パス分析」画面から「おすすめケース」分析へ
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 次に、比較対象病院の設定を行います。パスは病床規模や設立母体に関係なく重要な論点のため、特別な理由がない限り比較対象を限定する必要はありません。年月は、ある程度症例数が確保できる期間(最低でも3か月)を選択します。その後、「この条件で検索」をクリックすると、結果が表示されます。

図表2 「おすすめケース分析」画面
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STEP2:ロードマップで改善すべきポイントを確認する

 ロードマップ画面では、着目すべきポイントごとに現状をシグナルで表しています。他病院と比較して改善の余地が大きいのは、赤シグナルや黄シグナルです。改善余地が大きな項目から優先して取り組むことで、効率的な改善が可能です。DPCに対応したパスを作成するには、「在院日数」「医療資源」「出来高」の3つの視点が重要です。

図表3 「ロードマップ」画面
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STEP3:在院日数の視点

 「在院日数分布」をクリックします。①最頻値の日数が他病院より長くなく期間II内にあるか、②症例による差が大きくないか――の2点を確認します。外科系のパスで他病院と差異がある場合は、その原因が術前にあるのか術後にあるのかを「術前・術後日数」で確認します。

図表4 「在院日数分布」画面
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STEP4:医療資源の視点

 「おすすめケース」では、各請求区分の投入金額と一部の詳細項目(抗生物質製剤、術前血液検査、画像詳細)の分析が可能です。

1.抗生物質製剤

 薬剤は実コストになるため、必要最小限をパスに設定することが重要です。抗生物質製剤の分析で確認すべきポイントは3つ。①銘柄、②投与日数、③後発品使用状況――です。今回の分析では、投与日数が統一されていないことが明らかになりました。他病院の状況やガイドラインをもとに投与日数を設定しましょう。

図表5 抗生物質製剤 平均金額ベンチマーク 画面
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2.術前血液検査、画像詳細(術前)

 入院してからの術前検査・画像実施率が高くないかを確認します。腹腔鏡下胆嚢摘出術に限らず、予定手術の疾患では、術前の検査画像は外来実施を徹底することが重要です。

図表6 術前血液検査 実施率ベンチマーク 画面
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3.画像詳細(術後)

 X-P、CT、MRIの回数が他病院より多くないか、造影剤が後発品に切り替わっているかを確認しましょう。

図表7 画像区分分析 画面
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 なお、「全疾患」から分析対象の疾患を選ぶことで、その他詳細項目も同様に分析することができます。

STEP5:出来高の視点

 「全疾患」から分析対象の疾患を選ぶことで、出来高項目の実施状況を確認することが可能です。可能な項目はパスに組み込むことで、指示漏れや算定漏れを防ぐことができます。

図表8 薬剤管理指導料 算定率ベンチマーク 画面
1903_DB_fig8 解説を担当したコンサルタント 八木 保(やぎ・たもつ)

snakamura コンサルティング部門、アソシエイトマネジャー。リハビリの質と生産性向上、コスト削減、財務分析、DPC分析などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のCS向上チームのリーダーとして、院内分析担当者の育成実績多数。がん拠点病院で構成されるCQI(Cancer Quality Initiative)研究会のサポートなどでも精力的に活動する。