DPC医療機関群のII群病院。「大学病院本院であるI群病院に準ずる病院」として、全国の病院が毎年、厳しい実績要件を満たしてIII群から昇格、あるいはII群維持を果たしている。高度な急性期医療を提供する病院としての絶対的なブランドとも言える「II群」を手に入れるには何が必要なのか、その条件とは――。
数多くのII群病院の昇格・維持をコンサルティングしてきた「II群請負人」であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャーの塚越篤子、マネジャーの冨吉則行と湯原淳平が、II群昇格・維持の本質を語り合う連載。初回は、II群病院におけるリーダー像を探るとともに、「II群」を一つのツールとして見る側面に着目した鼎談のサマリーをお届けする(鼎談の詳細については、10月下旬より「メディ・ウォッチ」にて掲載します)。
維持、脱落の明暗分けた2つの事例
急性期病院の絶対的なブランドである「II群」を目指すため、あるいはII群を維持するためには何が必要なのか、その条件とは何か――。三者で共通するのは、「トップの強い意志」だ。病院長や理事長、病院管理者などのトップが、強い意志を継続することが最も重要だと指摘する。
例えば、こんな明暗が分かれた事例がある。ある自治体の病院は想定以上にオペ症例が集まり、幸運にもII群に昇格した。そのためII群を維持するための対策をほとんどせず、トップが「維持」を院内に意識させるようなメッセージを発することも一切なかった。結果、この病院はすぐにII群から脱落した。
一方、この病院が脱落したのと同じ時期に、余裕のII群維持を果たしたのが、ほぼ同じ規模の公立病院であるA病院(公立、400床台)。全国に先駆け地域包括ケア病棟の開設に踏み切り、急性期病床と亜急性期(回復期)病床を切り分けることで、急性期病床の重症度対策と平均在院日数短縮、診療密度向上の3つの最重要対策を同時に、一気に進めた。
A病院のII群維持の根底にあるのは、院長の強い意志である。当時の院長が院長に就任するやいなや、院長の考えていることを定期的に院内にしっかりと伝えるための院長講話をスタートさせ、徹底した現場主義で院内の声に耳を傾け続け、改革の素地を徐々に作っていった。つまり、小手先ではないということだ。大前提としてあるのは、やはり「医療の価値(質/コスト)」の向上であり、しっかりと医療と経営のデータを検証し、熟考に熟考を重ねて、医療の質を担保した、最適コストの医療を目指した結果なのである。
「急性期の本質」が凝縮されている
II群を目指し、維持しようとすることは、院内すべての職員のベクトル合わせにも奏効する。
制度開始からII群だったC病院(公的病院、300床台)は、「II群を死守する」を大方針とし、そのための活動を徹底している。II群というのは、ある種の完成された一つの姿であり、とても分かりやすい目標になると考えているためだ。そのため、この病院はベンチマーク分析で常に自病院の立ち位置を気にし、緊張感を持って在院日数のマネジメントであったり、集患対策に日々汗をかいたりしている。結果、この病院の在院日数などは非常に短いが、それでも診療科によっては医師が入れ変わったりで、ちょっとでも気を抜くと、すぐにII群維持に重要な経営指標の数値が下がってしまう。
II群の実績要件における基準も明確だ。例えば、診療密度だったら在院日数のマネジメントであるし、外保連指数も手術の件数や難易度であったりするし、内科系であれば重症な内科系疾患・救急がどれだけ取れているかも一つの指標になってくる。まさに「急性期病院の在るべき姿」という本質が全部詰まっているのが、II群というツールと言える。
そのため、II群そのものが収益に直結するかどうかは本質的な話ではなく、全く別の問題。II群を維持できるということは一番大事なところで、トップダウンがどれだけ効いているのかを示す一つの指標である。また、地域の中で自病院がどのような機能を持った病院なのかが周知徹底されているということの証しでもあると言えそう。
メディ・ウォッチでの連載ラインナップは以下の通り。メディ・ウォッチ・ジャーナルでは11月号で(3)~(5)、12月号で(6)~(8)を掲載する。
連載◆鼎談 II群請負人
- 最重要はトップの強い意志
- 院内を一つにする最強ツール
- 強みが不明確な病院に患者はこない(11月号掲載予定)
- 迷ったら針路は「医療の価値」向上(11月号掲載予定)
- 入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処(11月号掲載予定)
- 診療密度の「境界線病院」の未来(12月号掲載予定)
- やりたい医療から、求められる医療へ(12月号掲載予定)
- 急性期医療の本質が、そこにある(12月号掲載予定)