最新マーケットデータ公開、これだけは押さえたいコンサル直伝の「マーケット分析」テクニック

 最新の2015年度版マーケットデータ(退院患者調査データ、DPC導入の影響評価に関する調査結果)が公開されたことを受けて、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)は10日、次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」の「マーケット分析」に、最新データを反映させました。そこで今回は、これだけは押さえておいてもらいたいと思う「マーケット分析」を有効活用するためのテクニックをお伝えします。

(1)患者の動向を知るテクニック

 通常であれば毎年8月~10月頃に公開される退院患者調査のデータですが、今回は大幅に遅れ、年明け2017年2月9日開催のDPC評価分科会でようやく公開されました。今回公開されたデータは、(1)2015年時点の各病院の患者数把握、(2)現在検討中の公立病院改革プラン作成、(3)地域医療構想対策に向けた自院の戦略策定の直近資料――などに活用できます。特に、他病院の症例数推移について知るには、退院患者調査データが最も有効です。

 「病院ダッシュボード」では、「マーケット分析」の「地域シェア」を確認することで年度ごとの全体症例数の動きが分かります(図表1)。退院患者調査のデータは、年間10症例未満はカウントされていないため、MDC2別の区分で調べると自病院で把握している数字に近い数字を得ることができます。

【図表1】年度別地域シェアのイメージ

【図表1】年度別地域シェアのイメージ

 最初の検索では二次医療圏が固定されているため、特定の病院が症例数を伸ばしている場合、まず当該二次医療圏のいずれかの病院で患者数が減少しているかどうかを確認。その上で、特定の病院の減少が見られなければ、二次医療圏の固定を外し、「他医療圏からの患者流入はないか」に注目してみましょう。それでも増加病院と減少病院の関係性を確認することができない場合には、(1)DPCデータを作成していない病院の影響、(2)1入院で今まで済ませていた治療を複数回入院に分割した、(3)新病院効果で受療率が高まった――などが推測できます。重要な点は、増加が一時的なものか、それとも永続的なものか、その理由をしっかりと見極めることです。

(2)特定領域の増減を知るテクニック

 次に症例数が同じであっても、特定の領域で増減があり得ますので、その詳細を確認することも欠かせません。自病院と他病院の動向を調べるには、「マーケット分析」の「地域シェア」から「MDC2」の選択で、MDC2を指定して集計データをダウンロードしてみましょう(図表2)。少し面倒かもしれませんが、01「神経系疾患」から18「その他」までダウンロードすると、各病院の症例数変化がよくわかります。

【図表2】データダウンロードの手順

【図表2】データダウンロードの手順

 例として、長崎医療圏において「04 呼吸器系疾患」「05 循環器系疾患」のデータをダウンロードし、2015年における2疾患群領域での症例数割合、2疾患群における2012年と2015年の症例数割合の比較を行ってみました。各病院の強みがよくわかります(図表3、4、5)。

【図表3】症例数割合のイメージ(呼吸器・循環器)

【図表3】症例数割合のイメージ(呼吸器・循環器)

【図表4】症例数割合のイメージ(呼吸器)

【図表4】症例数割合のイメージ(呼吸器)

【図表5】症例数割合のイメージ(循環器)

【図表5】症例数割合のイメージ(循環器)

 マーケットデータは、今後の地域連携や機能分化の戦略を練る上で、非常に有効なツールの一つです。大改定が予想される2018年度診療・介護報酬改定に向けて、どの病院よりも早く、深く、自病院の強みと弱みを知り、その上で周囲の競合病院の動向を把握し、大改定を乗り越える戦略立案の一助にしてください。

解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。