近年、外来から退院まで患者目線で業務を組み立てることで、医療の質と経営の質の両立を図るマネジメント「PFM(Patient Flow Management)」が注目されている。
今回は、「病院ダッシュボードχ」の主要機能である「DPC俯瞰マップ」と「パス分析」を活用して、PFMを強化する方法を紹介する。5つのステップで、的確かつ定期的にPDCAサイクルを回していくことで、PFMの重要な役割の一つである「入院医療の外来化」などが進み、経営の効率化はもちろん、医療の質も向上させることができる。
PFMの具体例の一つが、術前の検査・画像診断の外来移行である。今回は術前の検査・画像診断の外来移行を例に、PFM強化のステップを確認していく。
検査・画像は診療行為点数がDPC日当点に包括されるため、可能な限り外来で実施することはDPC対応の基本だ。また、事前に各種検査から身体的リスクを把握することで、必要な検査漏れによる手術中止を防いだり、併存症の確認から早期の栄養指導に繋げるなど、医療の質向上にも貢献する。
ステップ1:改善優先順位の高い診療科を把握する
術前検査・画像診断の外来化が有効なのは、入院まで時間的余裕がある予定入院疾患である。まず、DPC俯瞰マップの「自病院分析」で、診療科別に手術症例割合と予定入院割合を把握しよう。GHC病院では、手術症例割合と予定入院割合が高い、外科・眼科・整形外科・耳鼻咽喉科がターゲットになりそうだ(下図)。
ステップ2:パス分析から分析対象疾患を選択する
優先順位の高い診療科を把握したら、パス分析に進もう。主要な手術疾患がまとめられている「おすすめケース」の「手術系」から、分析したい疾患を選択する。今回は、整形外科の人工股関節置換術を例にする。
ステップ3:「術前検査」、「画像詳細(術前)」のシグナルが黄色・赤色の場合は要注意
人工股関節置換術を選択し、分析条件を設定して「この条件で検索」をクリックすることで、経営改善のポイントを「青」(上位25%)、「黄色」(上位25~75%)、「赤」(下位25%)、の色別で分析結果を示す「ロードマップ」が表示される。ちなみに、PFMは全病院共通論点であるため、特別の理由がない限り、設立母体や病床規模などの比較対象を限定する必要はない。
ロードマップの「術前検査」と「画像詳細(術前)」のシグナルが黄色、あるいは赤シグナルの場合は、術前検査・画像の外来移行が徹底されていない可能性がある。各項目をクリックし、詳細を確認しよう。
ステップ4:分析結果から原因を解明し、解決策を検討する
術前検査については、半数近くの病院は外来移行が徹底されている。しかし、GHC病院は40%の症例に術前検査を入院で実施している。また、画像については、95%の症例に術前1回、XP(レントゲン)を入院で実施しており、改善の余地があることが分かる(下図)。
次に、分析結果をもとに医師や病棟看護師と議論し、原因を明らかにしよう。術前検査・画像がパスに入っていたり、医師独自の判断でオーダーされてていたりすると、術前実施率が上昇し、シグナルが黄色や赤色になりがちだ。
原因が明らかになれば、その解決策を導きだすのは比較的容易だ。上記の場合、パスを見直したり、医師にPFMの重要性を説明することで、検査の外来化推進が期待できる。
ステップ5:継続的にモニタリングし、改善活動を継続する
下図はPFMが優れている病院のロードマップである。多くの項目が青シグナルで、DPC対応が徹底されている。
突き詰めて考えれば、PFMを強化する上で検討すべき項目の最小単位はパスである。パスを定期的に見直すことで、PFMを強化する上で重要な確認項目である術前検査・画像だけでなく、在院日数や他の医療資源の適正化にも繋がる。一時的な改善で終わってしまわないように、継続的にモニタリングすることが重要だ。PFM強化を通して、医療の質と経営の質向上を目指して頂きたい。