病院経営に大きな影響を与える係数、その中でも機能評価係数Ⅱの評価期間(毎年10月~翌年9月)は今月が区切りになります。2021年度の機能評価係数Ⅱは2020年におけるCOVID-19の影響を考慮し、前年度(2020年度)に通知された係数(評価期間は2018年10月~2019年10月)を引き継ぐこととなりました。依然としてCOVID-19対応は落ち着きを見せない中で、来年度(2022年度)の機能評価係数Ⅱが果たしてどのように取り扱われるのか注目が集まりますが、来月10月から評価期間がスタートする2023年度機能評価係数Ⅱに目を向けて、その対応策について考えてみましょう。
今回のワンポイントレッスンでは、「複雑性係数」を例にとって新機能「症例Scope」を用いた具体的な対応策の検討ステップをご紹介します。機能評価係数Ⅱ分析に関する基本的な活用方法は2019年7月号『「係数分析」の「機能評価係数Ⅱ」を活用しよう』や2020年10月号『機能評価係数II分析を活用する ~係数分析・DPC俯瞰マップ機能~』でも紹介していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
STEP1:「病名分析」を用いて定義副傷病あり症例割合を確認
複雑性係数は、全国的に包括範囲出来高点数が高い疾患の症例割合が高まると上昇します。全国的に包括範囲出来高点数が高い疾患で代表的なものは高額な薬剤を長期にわたって使用することの多い血液疾患などですが、そのような症例を増加できるかどうかは自院の診療体制に大きく左右されてしまいます。
そこで、病院ダッシュボードχでは全ての病院が取り組むことのできる複雑性係数対策として「定義副傷病あり」症例数を増加させることを提案しています。皆さんの病院では、入院時併存症や入院後発症疾患から定義副傷病に該当するものを適切に拾い上げてDPCコーディングに反映できているでしょうか。下図表は「DPC俯瞰マップ」>「病名分析」>「定義副傷病」の画面です。自院における定義副傷病あり症例割合を確認してみましょう。
病院全体の傾向だけでなく、下図表のようにDPCコード12桁ごとの定義副傷病あり症例割合を他病院と比較することも重要です。どのようなDPCコード12桁において、どのような定義副傷病の選択が少ないのかを把握することで対応策もより具体的になります。
上図表で示した事例では「160100xx97x0頭蓋・頭蓋内損傷 その他の手術あり 手術・処置等2なし」において、定義副傷病である「誤嚥性肺炎」や「市中肺炎」の該当症例割合が他病院より少ないことを示しています。したがって、院内での取り組みとしては「誤嚥性肺炎」や「市中肺炎」といった定義副傷病に該当する症例が本当に存在しなかったかを確認していくことになります。その際の視点は大きく分けて2つあります。
①:医師による病名(定義副傷病に該当する病名)の記載はあったが、DPCコーディング担当者が見落としたケース
②:医師による病名(定義副傷病に該当する病名)の記載がなく、DPCコーディング担当者が気づけなかったケース(ただし、診療経過を踏まえると定義副傷病に該当することが疑われるケース)
上記①は初歩的なミス(あるいはヒューマンエラー)ですので、日頃から様々な工夫をして防止策に取り組んでいる病院が多いと思います。一方、上記②のようなケースがいるかどうかは、どのようにして確認すると良いでしょうか。1つ1つのカルテを開きながら確認していくには相応の労力がかかります。そこで活用してほしいのが「症例Scope」です。次頁で詳しく紹介します。
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