今回の診療報酬改定の目玉は「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)のデータ精度向上であるが、DPC点数設計においても変更点があり、各医療機関で新制度におけるシミュレーションを実施し、その対応策を考えていく必要がある。
そこで今回は、3月末にグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が期間限定機能としてリリースした病院ダッシュボードの「新制度シミュレーション」について、その機能を紹介する。
主要3機能、「制度間比較」「特定内科診療」「病院指標」
新制度シミュレーションとして3機能をリリースした。はじめに2014年度と16年度の『制度間比較』を紹介しよう。収入比較(診療科別、症例別)、入院期間比較(診療科別)、手術比較(診療科別、手技別、材料別)、およびその他として短期滞在手術等基本料3、CCPマトリックスが搭載されている。
次に、Ⅱ群の要件として新たに導入された特定内科診療の実績について、自病院分析および他病院とのベンチマークが可能な『特定内科診療』である。厚生労働省が定めたⅡ群要件の基準である「症例割合(3A)」「DPC算定病床当たりの症例件数(年換算)(3B)」「対象症例件数(年換算)(3C)」について任意で設定した期間(指定期間)における自病院の月次別数値の確認、またベンチマークすることが可能である。
最後に、『病院指標」では17年度より機能評価係数Ⅱでの評価が予想される「病院指標の作成と公開」について、候補となっている年齢階級別退院症例患者数や診療科別症例数TOP3など全7項目の指標について自病院数値確認とベンチマークが可能である。
まずは診療科別に具体的な影響額の確認を
新制度シミュレーションでは、14年10月以降の入院症例で、15年1月~12月の退院症例を計算対象にしている。また、14年度制度のDPCデータで16年度制度を計算しているため、新制度シミュレーション機能ではGHCの仕様にて計算を行っていることに注意していただきたい(新制度SIM注意点を参照)。
図2からは、診療科別の症例数(期間は任意で選択した期間(図2では15年7月~12月の直近6ヵ月)と年換算)、14年度制度と16年度制度のDPC金額およびその差額が確認できることがお分かりいただけると思う。図3では、診療科別の14年度制度と16年度制度の差額をグラフで示している。15年1月~12月の退院症例をもとに、16年度制度への変更で包括対象部分にどれくらいの具体的なインパクトがあったのかを、確認していただきたい。
材料別の償還価格、大幅に下がる診療科も
今回の診療報酬改定でも、償還価格の高い特定保険医療材料の償還価格の金額が引き下げられた。特に循環器領域、整形外科領域の医療材料の償還価格は大きな下がり幅である。
材料別手術比較(図4)では、医療材料名称(レセプトコード)別に14年度と16年度の制度での具体的な金額、指定した期間での使用症例数、使用量、材料金額合計、およびそれらの差額が確認できる。図4で確認できるように、人工股関節用材、髄内釘などの整形外科領域材料、ペースメーカー、冠動脈ステントセットなどの循環器領域材料の金額が大きく減収となっていることがわかる。そのため、自院の医療材料購買データをもとに、用度課や管財課など担当部署職員を中心に、該当診療科の医師も巻き込みながら、代理店、メーカーと交渉を実施すべきである。
図5では、15年1月~12月の退院データを用いて、横軸に病床規模、縦軸に14年度から16年度の制度変更での材料金額合計の差額を示している。一般的に病床規模が大きくなると手術件数も多くなるため、病床規模が大きい医療機関ほど材料金額合計の減収金額が大きいことがわかる。ただ、特に循環器科、整形外科における手術件数が多い医療機関では減収幅が大きくなる可能性が高い。そのため、病床規模に関係なく、診療科別で差額の具体的な数値を確認し、適切な購入価格を実現するための価格交渉が必要だ。
今回の「病院ダッシュボード ワンポイントレッスン」では、期間限定で提供している「新制度シミュレーション」の一部を紹介した。このシミュレーションを通して、自病院における制度間の収益インパクトを把握できる。是非、具体的な収益インパクトの数字を確認した上で、今後の自病院における方向性や対策を検討していただきたい。