急性期病院にとって入院収益を左右する係数対策は重要課題の一つだ。今年度、暫定調整係数が廃止され、その分が基礎係数と機能評価係数IIに置き換えられる。2019年度係数計算に関わるDPCデータ実績は2017年10月から2018年9月までの期間。現時点ですでに半年が経過しており、待ったなしの対策が求められる。「新年度になって、改定対応が落ち着いてから――」では遅い。今月中に現状の可視化と課題を明確化しておこう。
今回は、病院ダッシュボードχ(カイ)の機能評価係数II分析機能を紹介する。
効率性係数
本係数は在院日数短縮の努力を評価したもの。疾患構成を全病院平均に補正した場合の平均在院日数で各病院が評価されている。闇雲に在院日数を短縮させることは非効率かつ効果的ではない。まずは、全国的に症例が多い疾患を知ることが必要である。次に、その疾患に対して在院日数のマネジメントができているかを確認することが重要だ。
病院ダッシュボードχ(カイ)効率性係数分析画面では、全国症例数順一覧と共に、自病院症例数、入院期間II日数、自病院の入院期間II超率と平均在院日数が表示される。例示した、全国症例数2位の「狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1なし、1,2あり 手術・処置等2なし 定義副傷病なし(050050xx02000x)」の入院期間IIは4日だが、自病院の平均在院日数は5.4日と長い(図表1)。本DPCコードを選択(左ワンクリック)すると、その下のグラフが連動して絞り込まれ、在院日数分布が表示される。
自病院で検討すべきことは、(1)自病院では入院期間Ⅱに合わせた4日パスが稼働しているが、一定数存在する在院7日以上症例の妥当性(2)相対的評価の中で、他病院では、4日と同様3日パスも多いことから、3日パスの設定―の2点となる。
複雑性係数
本係数は患者構成の差を1入院当たりの包括点数で評価したもので、1入院の包括範囲出来高点数を、同じDPCの全国平均に置き換えその点数を比較している。つまり、医療資源(包括点数)を多く投入している疾患を何人受け入れているのか、という評価だ。
1入院あたりの包括点数の違いを、「副傷病名の有無」で説明しよう。「狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等」は、肺炎や尿路感染症(手術あり、手術なし両方に適応)、認知症(手術なしに適応)等の副傷病名で分岐コードをもつ疾患だ。図表2で示したように、「副傷病あり」の包括点数は、「副傷病なし」のそれよりも多い。自病院の副傷病名付与割合を知ることが、本係数向上への近道となる。
病院ダッシュボードχ(カイ)複雑性係数分析画面では、自病院の副傷病名分岐コードがある症例一覧を表示(図表3)。自病院の付与割合と他病院を比較しよう。例示の「前腕の骨折」の副傷病名は、狭心症・骨粗鬆症等。症例単位で診療内容を確認しながら副傷病名付与の可能性はなかったか、今後、漏れをなくすための運用フローの検討が必要だ。
救急医療係数
本係数は救急医療(緊急入院)の対象となる患者治療に要する資源投入量の乖離を評価したものである。様式1での「救急医療入院」かつ、救急医療管理加算や救命救急入院料等入院初日から算定している患者が評価される。
図表4のように、救急医療管理加算算定は地域差が大きい。より現実的な対策を検討するため、病院ダッシュボードχ(カイ)では、地方厚生局を絞り込んで救急管理加算算定状況を比較することが可能だ(図表5)。予定入院を除外したうえでの自病院の症例数の多い順一覧表では、救急医療管理加算1と加算2、予定外入院、それぞれの算定割合を他病院と比較ができる。各項目の算定割合が色の濃淡でも表現されているので、その違いがパッと見てパッとわかる。
地域の傾向を知るとともに、即日手術の同じ疾患にもかかわらず、加算の取り方にバラツキがある要因はなにか、等院内の算定に関わる運用についても検討する資料としていただきたい。
今回は、係数分析機能の中の機能評価係数IIを紹介した。機能評価係数II以上に急性期病院らしさが評価される「基礎係数分析」画面も是非見ていただきたい。シミュレーション機能がより充実しているので、基準値到達までの道のり、更なる急性期度向上に向けての目標設定等に貢献するはずだ。