本質的な改善活動に注力するため、年度始めにすべきこと―「経年比較」の重要性を知り、激変の同時改定に備えよう!

 2017年度がスタートした。今年度は診療報酬・介護報酬の同時改定前年であり、非常に重要な1年と位置付けるべきである。4月になって人事異動等も経て、各部署で慌ただしさが残ると思うが、節目として、2016年度の棚卸を実施し、今年度上半期ですべき事を整理してはどうだろうか。その際に、病院ダッシュボードの経年比較機能を是非活用して欲しい。

 病院ダッシュボードの各機能には、経年比較ができる機能が多く実装されている。今回は「DPC俯瞰マップ」「DPCケース分析」の経年比較機能に着目をして解説する。

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【DPC俯瞰マップ】各種入院経営指標の経年比較で大きな変化を棚卸

 まず、「病院ダッシュボード」 ⇒ 「DPC俯瞰マップ」 の自病院分析を選択する(図1)。年月①と年月②をそれぞれ、2015年度、2016年度に設定すればすぐに各種入院経営指標の経年比較をすぐに把握することができる。

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図1:自病院分析での各種入院経営指標の経年比較イメージ

図1:自病院分析での各種入院経営指標の経年比較イメージ

 図1が表示結果である。初期設定は標榜診療科ごとの2015年度と2016年度の指標を並べてみる事ができる。以前のワンポイントレッスンでも記載しているが、俯瞰マップの指標で特に経年変化を見ていただきたいのは下記の指標、特に太字の4項目である。

  • 症例数/月
  • 平均在院日数
  • 期間Ⅱ超率
  • DPC総収益
  • 医療資源
  • 1日単価(係数加味)

 このように、各科の変化を一目で見ることが出来るので、「○科は減っています。単価も下がっています」という報告で終わらずに、「何故この変化が起こったのか」「各科の変化の要因は何なのか」を定量的に見ていく事が大きなポイントである。DPC俯瞰マップでは診療科のボタンを押すことで疾患別にドリルダウンが可能になっているので、経年変化を見ることで次年度の各科の強化すべき重点目標が見えてきて、今年度のアクションに繋がるだろう。

 さらに理想のアクションを決めた重点目標を、KPIとして毎月追っていくことができれば間違いなくPDCAが回っていく。

【DPCケース分析】赤シグナルをなくしてモチベーションを上げる

 DPCデータをパス視点で分析できる「DPCケース分析」では、経年の比較をすることで具体的に取り組んだアクションの結果を視覚的に確認することができる(図2)。

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図2:ケース分析の分析結果イメージ

図2:ケース分析の分析結果イメージ

 図2は結腸がん手術症例のパス分析の結果である。他病院とベンチマークしてシグナル結果が出るが、「在院日数分布」が黄色から赤へ、「抗生物質製剤」が黄色から青にシグナルが変わっている。結腸がんのような予定手術症例では、パスの整備が必須であるが、2016年度にパスの整備の取り組みをしていれば「その成果が出ているのか出ていないのか」「それともアクションしていないのか」などの状況がシグナルを見ることで判断できる。

 例えば、大腸がんのパスの設定日数の遵守率が下がって分布のバラツキが大きくなったのであれば、何故バラツキが多くなったのかを仮説検証し、次年度、バラツキをなくす(パス遵守率を上げる)といった目標設定ができる。同時に、図2の抗生剤のように、目に見えた成果が出た場合はしっかりとフィードバックする事で対応したスタッフのモチベーションは向上するだろう。

 シグナルは相対評価であるため、自病院のアクションがなく、他病院が何らかのアクションを起こしている場合、何もしていなくても黄色から赤、青から黄色の変化がある場合もある点を最後に追記しておく。

 このような棚卸を4月、5月で一気に行うことで、上半期の足下対策を練っていく。すると、10月以降は最重要の同時改定に向けた準備・情報収集に注力できる。そのためにも病院ダッシュボードの経年比較ができる機能を積極活用し、分析を省力化することで、その分の浮いた時間をより本質的な改善活動計画であるアクションプラン立案やKPI設定に充ててほしい。

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解説を担当したコンサルタント 井口 隼人(いぐち・はやと)

iguchi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャー。
筑波大学生物学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。病床戦略支援、人財育成トレーニング、DPC分析、がん分析、臨床指標分析などを得意とする。東京医科大学病院(事例紹介はこちら)、済生会宇都宮病院(事例紹介はこちら)、さいたま赤十字病院(事例紹介はこちら)、広島市立安佐市民病院(事例紹介はこちら)、相澤病院(事例紹介はこちら)、旭川赤十字病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。雑誌、テレビ、新聞などへのコメントも多数。「週刊ダイヤモンド」のデータ分析特集では、医療界を代表する「凄腕データサイエンティスト」として紹介される(関連記事はこちら