「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)のデータ精度向上が、急性期病院の経営における重要な論点として注目を集めている。重症患者割合の要件引き上げや生データの提出義務化などが決まったためだ。今後、急性期病院が実効性のある病床戦略を構築していく上で、看護必要度のデータ精度は欠かせない経営課題となった。
そこで今回は、4月にグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)がリリースする病院ダッシュボードの新機能「看護必要度分析」について、具体的な看護必要度のデータ精度向上と、病床戦略構築の手法を紹介する。
症患者割合25%、生データ提出義務化で戦々恐々
2016年度診療報酬改定で看護必要度が大幅に見直される。特に、一般病棟用においては、A項目の追加(2項目)、B項目の2減2増、C項目の新設、と今まで以上に複雑な評価となる。7対1入院基本料の基準値は、A項目2点かつB項目3点、A項目3点以上、C項目1点以上の3つの基準値にて、それを上回る割合が25%(200床未満で病棟群を届出しない病院は23%以上)になることが決まった。
重症患者の受け入れ割合のデータ提出方法も見直される。これまで、重症患者割合は病院側の「自己申告」とも言える状況だったが、16年10月以降、看護必要度の生データ提出が義務化される。今後、データ精度に問題があれば、当局から指摘を受ける可能性も浮上してきたというわけだ。
各病院が戦々恐々としている中、GHCは常に看護必要度のデータを正確にチェックできる新しいオプション機能を開発し、4月1日に病院ダッシュボードへ実装する見通しだ。開発コンセプトは、「看護必要度データの精度を高めた上で、病床戦略構築につなげる」である。
「看護必要度のデータ精度は必ずしも良くない」
GHCは以前から、看護必要度データとDPCデータをマッチングする取り組みを行ってきた。マッチングとは、1症例の毎日のデータを一つひとつ紐付ける分析である。そこから分かったことは、「看護必要度のデータ精度は必ずしも良くない」ということだ。
例えば、DPCデータを主とし、A項目に該当する手技や薬剤の請求データが挙がっている場合、看護必要度データの同じ症例・同じ日の該当項目にはフラグが立っているか否かを検証する。これを我々は「一致率」と呼ぶ。一致率は病院によって異なり、また“見える化”し、効率的な取り組みを行うことで改善することを、我々はコンサルティングの経験から知っている。
自病院の重症患者割合が基準値に達しない要因は、もしかしたら、この精度によるものかもしれない。実際、一致率を改善することにより、重症患者割合が2-3%改善する病院も少なくない。特にA項目の“専門的処置”は看護師が薬剤を判断する必要があり、後発医薬品が増えてきている昨今では、チェックが漏れてしまうケースが多発している。
図1は、病棟別にA項目の一致率を分析した。一致率が90%を超えている項目を青、70%未満の項目に赤の色を付与することで、それぞれの病棟の強み、弱みが明確になり、具体的な改善行動に移しやすい。
図2ではさらに絞り込み、専門的処置の中で、どの項目がポイントなのかを検証している。
最終的には、専門的処置に該当する薬剤別にまで落とし込み、該当病棟は何を注意すべきなのか、注意するための行動を明日からどうするか、検討する必要がある(図3)。
毎月のデータ検証で意味ある経営戦略を
一致率は、「勉強会を頻繁に行いましょう」では改善が困難である。より具体的に、病棟ごとに何を重点的に、どの様に対策を行うのかが重要なポイントとなる。その対策が、翌月、翌々月になり、成果として現れているか、データを用いてしっかりとチェックすることが欠かせない。そうすることで、PDCAサイクルを回すことができる。
看護必要度データの精度が向上すると、その病院本来の状況が把握できる。その上で、今後の病院の方向性、各病棟の編成をどうするかを検討すべきだ。その過程をしっかりと踏むことではじめて、意味ある病床戦略構築を検討できる。
看護必要度データを自力で分析することは非常に困難である。また、自病院の一致率が妥当か否かの判断は、ベンチマーク分析しないと分からない。是非、病院ダッシュボードの新機能「看護必要度分析」を活用して、データ精度に問題がないか毎月、検証していただきたい。