持参薬の年間平均使用額は1500万円 使用症例数ランキング、大きな地域差も

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入院時持参薬のルールが改定されて8年が経過した。病院経営の現場では、薬剤の安定供給・流通問題含めて薬剤費の高騰が問題になっている。こうした背景を受けて今月の「LEAP JOURNAL」特集では、持参薬について分析した。分析対象の全DPC病院における持参薬の年間平均使用額は1500万円。持参薬使用の症例数ランキングを作成したほか、分析を通じて持参薬使用には大きな地域差があることも確認できた。

入院時持参薬の算定ルール見直しの背景と分析条件

入院の契機となった傷病に対して用いる持参薬は、2014年度診療報酬改定の算定ルール等の見直しで、入院時の使用が原則禁止され(図表1、注1参照)、やむを得ず持参薬を用いる場合は、その理由(特別な理由)を記載することが義務付けられた。この制度変更は、入院時に使用する高額な薬剤をあらかじめ外来で処方(出来高算定)し、それを入院時に使用することで当該薬剤費を浮かす病院の存在が明らかになったという背景がある。

図表1 2014年度診療報酬改定 DPC制度の見直し等②(厚労省資料抜粋)
図表1 2014年度診療報酬改定 DPC制度の見直し等②(厚労省資料抜粋)
(注1)入院の契機となる病名については原則禁止であるが、例えば外来で実施されている化学療法の経口薬を外来処方されている患者が、肺炎による急性増悪によって入院となった際には、肺炎が入院の契機となる病名になるため、化学療法剤(経口薬)は持参薬として使用することが可能だ。また、狭心症で通院治療中の患者に対して降圧薬、不整脈薬が外来処方されている場合、急な胸痛で入院となれば、入院の契機病名は「狭心症」となるが、狭心症の背景疾患としての高血圧、不整脈に対しての外来処方薬は持参薬として使用することができ、狭心症の急性期症状用に追加で処方する必要があるニトログリセリンは入院時処方で出す必要がある。パーキンソン病で外来通院治療中の患者が、パーキンソン病の急性増悪で入院となった際には持参薬を処方することができるかは判断が難しいが、パーキンソン病に対して入院時処方を新たに行い、入院前に処方された薬については、退院後も残薬分も有効活用できるよう持参薬を捨てずに保管しておくことが望ましい。

2014年度改定の翌年、診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会で特別調査が行われ、診療報酬改定後も「入院の契機となる傷病」の治療に係る持参薬が、6割以上の医療機関で使用されていたことが明らかになった(図表2)。本資料が出てきた際に、厚労省は「持参薬使用の有無で医療機関の負担に差が生じており、好ましくない」「資源投入量の不合理な差によって包括点数設定が歪められている可能性もあり、望ましくない」と判断し、2016年度診療報酬改定でも、(1)入院の契機となった傷病の治療に持参薬を用いることは原則禁止する、(2)やむを得ず持参薬を用いる場合には、その理由(特別な理由)を診療録に記載するという持参薬ルールの継続を提案した。「特別な理由」には、「病院側の方針」や「医師の方針」などは含まれず、厚労省は「特別な理由」の具体例として、次の2つを挙げている。

▽臨時採用薬が使用可能となるまでの入院初期(2日程度)の持参薬使用

▽退院後不要となる薬剤の使用

また、持参薬を使用した場合には、その使用量をEFファイルに入力することも求めた。「EFファイルへの理由の記載も求めてはどうか」との意見も出たが、自由記載では集計が困難なため当面は使用量の記載に留まることとなった。

図表2 平成27年度特別調査(アンケート)の結果報告について
図表2 平成27年度特別調査(アンケート)の結果報告について

<分析条件>

分析期間
2022年1月~2022年12月

施設数
1,039病院、5,964,598症例

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