【コラム1】 グループ連携の秘訣は「患者目線で常に改善」

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 神奈川地区と埼玉地区で救急医療から在宅療養支援までを手掛ける石心会。川崎幸病院や埼玉石心会病院など計30施設を有する法人全体の広報を担当する鍋嶌氏は、事業所をまたいで職員間の情報共有を密にする「インナー広報」にも力を入れています。

 

川崎市内だけで7医療機関、どう連携するか

 例えば、川崎地区には現在、救急医療や急性期医療を提供する川崎幸病院のほか、▼川崎幸クリニック(一般外来)▼第二川崎幸クリニック(一般外来)▼川崎クリニック(透析治療・一般外来)▼さいわい鹿島田クリニック(透析治療・一般外来)▼アルファメディック・クリニック(人間ドック・生活習慣病健診)▼川崎健診クリニック(生活習慣病健診・一般健診)――の6診療所を構えます。加えて、訪問看護ステーションや介護支援事業所、川崎駅の隣の鶴見駅にはさいわい鶴見病院(入院・一般外来)などもあり、鍋嶌さんは、「入職当初、まださいわい鶴見病院や第二川崎幸クリニックなどはありませんでしたが、それでも施設数が多く、どうやって連携しているのだろうと素朴な疑問を感じました」と話します。

 実際のところ、各施設がホームページで掲載する情報などは当時、統一できておらず、▼地図情報に石心会の別の医療機関が表示されていない▼ホームページに統一感がない――といった課題がありました。川崎幸病院事務部の植田宏幸事務部長は、「ホームページは各施設が発信したい情報だけを載せ、それで満足してしまっていたのです」と振り返ります。

 事業所間で、「どのような情報を公表するか」を統一した結果、各施設のホームページでは現在、▼法人の他事業所の地図を掲載する▼掲載イメージを統一する▼法人の他事業所のロゴを掲載する―といったことが徹底されています。また、例えば川崎幸クリニックのホームページの交通アクセスを紹介するページには、川崎幸クリニックに加えて川崎幸病院、第二川崎幸クリニックの位置が示された地図画像が掲載されています。

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施設ごとのホームページの地図には地域の関連施設すべての場所を掲載している

健診結果に受診先示し「患者さんを困らせない」

 石心会が患者に提示する関連施設情報を工夫した例として、各施設のホームページのほか、診療所が健診を受けた人に送付する「健診結果のお知らせ」が挙げられます。検査値によっては受診を勧めることもありますが、「どこで受診すればいいか」がお知らせに書いてありませんでした。健診事業所にも受診施設についてのお問合せが多くありました。このままでは患者が受診先に困ってしまうと考えた鍋嶌氏は、「石心会の事業所と診療科を利用者の方にご紹介したらいいのでは」と、健診結果に応じて示す表を作成して各施設に共有。利用者の方々が困らないような工夫を行った結果、今では受診についてのお問い合わせが減ったと言います。

 鍋嶌氏は「インナー広報に関する業務は地味かもしれません。それでも、患者さんが困ってしまわないように、やるべきことだと思っています」と話し、事業所間の連携も「患者目線」で進めるべきだと指摘します。

院内広報、新たなツールを検討中

 そのほかインナー広報の関連で、鍋嶌氏は法人内の広報誌を作成してきました。また、「同じ診療科の職員の間でコミュニケーションをより密に取りたい」という依頼を受けて、現在、新たな情報共有ツールを開発しています。現在は、依頼した診療科職員の声を聴きながらツールの内容を模索している最中ですが、「良いものができれば、単独施設やグループ全体での情報共有にも取り入れたい」と話す鍋嶌氏。より良い広報を目指した改善に向け、患者目線はもちろん、職員目線の徹底に余念がありません。

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