優先順位の高い経営課題をいち早く発見できる 「おすすめケース分析」を使いこなす

DBχワンポイントレッスン用見出し

 2018年5月18日、「病院ダッシュボードχ」のパス分析に「おすすめケース分析」が追加された。今回のリニューアルに伴い、今まで以上に「優先順位の高い経営課題」をいち早く発見し、効果的かつ効率的に改善を推進できるようになった。今回は、パス分析の「おすすめケース分析」を使いこなす方法を紹介する。

疾患を選択し、分析条件を入力

 現在「おすすめケース分析」で分析可能な疾患は、14診療科の手術系65疾患である。事前に分析対象疾患が決まっていない場合は、「DPC俯瞰マップ」の「ベンチマーク分析」でDPC対応ができていない疾患(例:在院日数が長い、対出来高増減収金額が低い、等)に目安を付け、その上で「おすすめケース分析」から分析対象疾患を選択してもよいだろう。
 今回は「大腸の悪性腫瘍(手術):腹腔鏡」を選択する。疾患を選択すると、分析条件を入力する画面に移る。パス改善は病床規模や設立母体に関わらず全急性期病院共通の視点であるため、特に比較対象を限定する必要はない。年月は一定の件数が確保できる期間で設定しよう。因みに、「経年比較」のチェックボックスにチェックを入れると、過去の任意の期間との比較が可能だ。

【図表1】 おすすめケース分析
MWJ6db_fig1

ロードマップで課題のある項目を把握

 「この条件で検索」を押すと、分析結果としてDPCロードマップ(図表2)が表示される。DPC対応をする上で必要な項目と、他病院と比較した自病院の状況が一目で把握できる。青は上位25%で「良」、赤は下位25%で「要改善」、黄はその中間で「要注意」である。赤と黄色の項目から優先的に改善することで、得られる成果も大きくなる。今回は赤シグナルの在院日数分布と抗生物質製剤に着目する。

【図表2】 DPCロードマップ
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「在院日数分布」はパス日数の順守率を評価

 「在院日数分布」が赤シグナルの場合は、在院日数のばらつきが大きく、「パスで設定された日数での退院」に向けたマネジメントできていないことを意味する。現在の設定在院日数は適切か(期間Ⅱ内か)も含めて、パス日数の遵守に向けた改善策を検討しよう。

【図表3】 在院日数分布
MWJ6db_fig3

「抗生物質製剤」で見るべき3つのポイント

 医療資源に含まれる各項目が赤シグナルの場合は、その投入量(金額)を適正化することが重要だ。抗生物質製剤に代表される薬剤の金額適正化に必要なポイントは、「銘柄」「投与日数」「後発品」の3つ。

 図表4の分析結果から、当院の課題は「銘柄」であることが分かる。高価なフルマリンをセフメタゾンの後発品に切り替えることができれば、医療資源の適正化に繋がる。

【図表4】「抗生物質製剤」で見るべき3つのポイント
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 今回紹介した「おすすめケース分析」に掲載されている疾患は、全国的に症例数の多いもので構成されている。病床規模や自院の得意・不得意等に関わらず、標準治療を目指して是非活用してほしい。

解説を担当したコンサルタント 八木 保(やぎ・たもつ)

yagi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。理学療法士、中小企業診断士。
名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業。大手商社にてヘルスケア業界におけるマーケティング商品開発、中小企業のコンサルティングを経て、入社。リハビリの質と生産性向上、コスト削減、財務分析、DPC分析などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のCS向上チームや社外のCQI(Cancer Quality Initiative)研究会のサポートなどでも精力的に活動する(諏訪中央病院の事例紹介はこちら、津島市民病院の事例紹介はこちら)。