急性期一般入院料への移行状況

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 全国各地の医療機関の経営を支援するGHCのコンサルタント。彼らが病院経営の現場で見聞きした興味深い情報をつぶやきます。

 2018年度診療報酬改定で導入された急性期一般入院料について、様々な講演会やセミナーで次のような話を聞きます。10対1へ階段を下りにくい急性期病院にとって、急性期一般入院料2と3は、収益をほぼ下げずに7対1の人員配置を崩すことができる。人員確保や重症度が厳しい急性期病院は、急性期一般入院料2か3へ移行してはどうか――。

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 急性期一般入院料の導入を受けての移行状況は、経過措置期間が切れた2018年10月以降のDPCデータで把握できます。そこで、GHCが保有する18年3月及び18年10月~12月のDPCデータがある521病院ついて、入院基本料の移行状況を分析してみました。

 結果は下記の通り。

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 18年3月で7対1を算定していた病院は、2病院を除いて旧7対1入院基本料に相当する急性期一般入院料1を算定しています。10対1を算定していた病院では、急性期一般入院料1に移行した病院が17.6%。旧10対1入院基本料に該当する急性期一般入院料4~6については、43.2%の病院が最も高い入院料である急性期一般入院料4を算定しています。

 数字だけ見ると、急性期一般入院料に変わったが、7対1(急性期一般入院料1)算定病院は少なくなっておらず、むしろ10対1から7対1基準を満たして急性期一般入院料1を算定する病院が増えています。

 この背景には何があるでしょうか。

 一つには、人員計画を見直すのが年度末であるため、19年4月に急性期一般入院料2に移行すると考えている病院があるのかもしれません。4月移行の動向にも注目です。

 もう一つは、急性期一般入院料1の重症患者割合の基準が厳しくならなかったという背景があるかもしれません(関連記事はこちら)。また、重症患者割合を決める「重症度、医療・看護必要度」の評価方法は、18年度診療報酬改定でDPCデータのEF統合ファイルを用いる「看護必要度II」が導入されました。看護必要度IIは、従来型の看護記録を用いた「看護必要度I」よりも重症度基準が低いため、これに変えることで、病院によっては重症患者割合の要件を満たしやすくなる可能性もあります。

 患者内容が変わらず、人員配置を減らしていくことは臨床現場にとっては負担でしかありません。人員削減は病院経営陣として最もやりにくいことの一つです。無駄を省き、業務を効率化すること、そして地域から求められている医療レベルと経営を比較しながら、特に看護師確保が難しい地域においては、算定すべき入院料を見極めていくことが今年度残された時間で必要になります。

解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

snakamura 社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。コンサルティング部門チームリーダー。豊富な社会保障制度の知識とコンサルタントの経験やノウハウを生かして、「メディ・ウォッチ」で積極的な情報発信をする。日本経済新聞や週刊ダイヤモンドなどメディアの取材協力も多数。

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