「看護必要度分析」大幅リニューアル、C項目など新制度、データ修正やベンチマークに対応

 次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」の新機能「看護必要度分析」が2016年度制度に対応した。これにより、新制度のA項目やC項目での分析が可能になった。ベンチマーク分析や「Hファイル」でのデータ提出にも対応している。

 今回の刷新で最も大きいのが、症例別での分析にも対応したことだ。これにより、精度に問題のある「重症度、医療・看護必要度(看護必要度)」のデータを、過去に遡って修正することが可能になった。最初のデータ提出に向けて、データ精度に不安のある病院の安心に寄与するものと自負している。

最初のデータ提出は17年1月

 看護必要度が16年度診療報酬改定で大幅に見直されたのは周知の通りだ。念のためにおさらいすると、一般病棟用においてはA項目の追加(2項目)、B項目の2減2増、C項目の新設が行われた。7対1入院基本料の重症度割合の基準値は、A項目2点かつB項目3点、A項目3点以上、C項目1点以上の3つで25%(200床未満で病棟群を届出しない病院は23%以上の経過措置あり)。さらに、重症患者の受け入れ割合のデータ提出方法も見直された。

 これまで、重症患者割合は病院側の「自己申告」とも言える状況だった。それが16年10月以降、看護必要度のHファイル提出が義務化された。最初のデータ提出は17年1月で、提出するデータの対象期間は16年10月から12月の3か月分になる。今後、データ精度に問題があれば、当局から指摘を受ける可能性もある。

 こうした背景の中でさらに使用できる分析項目が増え、パワーアップしたのが「看護必要度分析」である。「看護必要度分析」はこれまで、病棟単位や診療科単位で看護必要度のデータ精度を確認することができた。まず、今回の刷新について触れる前に、看護必要度分析の基本的な考え方を確認する。

まずは俯瞰して「一致率」の改善活動開始を

 「看護必要度分析」の主な機能は「自病院分析」と「A項目データ精度分析」だ。前者が重症度をさまざまな切り口から把握するもので、後者が請求データであるDPCデータと看護必要度データからデータ精度を把握できる。

 主に分析に用いる「A項目データ精度分析」の機能は、DPCデータをベースとし、A項目に該当する手技や薬剤の請求データが挙がっていて、かつ看護必要度データの同じ症例や同じ日の該当項目に採点がある場合を「一致している日」とし、そうでない場合は「一致していない日」としている。この一致している日数が全体の評価日数に占める割合を「一致率」と呼んでいる。

 自病院の重症患者割合が基準値に達しない要因の一つに、この精度が関係していることがある。実際、一致率を改善することにより、重症患者割合が2-3%改善する病院は多い。特にA項目の「専門的処置」は看護師が薬剤を判断する必要があり、後発医薬品が増えている昨今では、チェックが漏れてしまうケースが多発している。Hファイルの提出が間近に迫る中、一致率の向上は必須だ。

 一致率はどう改善すればいいのか――。最初の一歩は、「一致率を俯瞰的に把握すること」だ。

(図表1)A項目一致率

(図表1)A項目一致率

 上記は、A項目の一致率を分析している(図表1)。貴院におけるA項目別の強み、弱みが明確になり、具体的な改善行動に移しやすくなる。こうした一致率の分析は病棟別や薬剤別(図表2)、そして今回新たに症例別でも分析できるようになった。また、ベンチマーク分析にも対応し、病院全体、疾患別に重症度について他病院との差も確認できる。まずは貴院の現状を正確に把握し、最も一致率が高い病棟の値を目標にし、その病棟の採点フローを共有するなどして、一致率の改善活動をしてはどうだろうか。

(図表2)薬剤別分析

(図表2)薬剤別分析

過去に遡ってデータ修正可能に

 それでは「看護必要度分析」における今回の変更点を見ていこう。まず、2016年度制度に対応したことで、A項目の内容が新制度の内容に更新されたことに加えて、C項目での分析もできるようになった(図表3)。

(図表3)C項目の病棟別一致率

(図表3)C項目の病棟別一致率

 そして今回の刷新の目玉と言えるのが、症例別分析だ(図表4)。これまでの機能である病棟単位やA項目別のデータ精度分析は、データ精度に問題のある病棟やA項目に目星を付けて、今後の改善活動のきっかけを得ることについては大変有用であるものの、精度に問題のある症例の看護必要度データを、過去に遡って修正することはできなかった。それが今回の「看護必要度分析」の刷新により、症例単位でのデータ精度を確認できるようになったことで、データ修正が可能になった。

(図表4)症例別分析

(図表4)症例別分析

 また、症例別に他病院の重症度割合と比較することも可能だ(図表5)。自病院の過去と未来の看護必要度データ精度対策ができるようになったことに加えて、他病院との比較もできるようになったことで、看護必要度を軸にしたより高度な経営判断の支援になることができると期待している。

(図表5)ベンチマーク分析

(図表5)ベンチマーク分析

 看護必要度は、急性期病院が今後の自病院の立ち位置を決断する上で重要な経営指標の一つである。そのため、今後も「看護必要度分析」はさらに機能強化していく方針で、近く、病床戦略の立案をサポートする機能なども実装する計画だ。具体的なリリース時期が決まり次第、各種案内をさせていただくので、その際は是非、内容をご確認いただきたい。

解説を担当したコンサルタント 本橋 大樹(もとはし・だいき)

motohashi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
米国ウィスコンシン大学経済学部卒業。外資系医療機器会社、医療系コンサルティング会社を経て、入社。医療データサイエンティストの育成や病床機能分化の策定、医療材料や委託コストの削減などコスト削減ソリューション全般を得意とする。足利赤十字病院(事例紹介はこちら)、津島市民病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、コスト削減に関する社内の新規プロジェクトチームのリーダーを務める。