「患者エリア分析」と「チーム医療プラス」機能で連携状況をつかめ!

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 前号の特集では、急性期病院が退院調整を円滑に進めるためのポイントを整理した。国が急性期病床の最適化と在宅復帰率の向上を目指す中で、退院調整関連の議論は重要な論点の一つだからだ。

 今回の病院ダッシュボードワンポイントレッスンでは、地域連携の在り方について、地域連携パスの活用状況を軸に見ていこう。患者の入院経路(入口部分)や退院先(出口部分)の見える化は、経営戦略上、重要だ。見える化したデータを地図上にマッピングし、分かりやすく表示するサービスが、病院ダッシュボードの「患者エリア分析」となる。本稿では、患者エリア分析の診療科別退院先分析を取り上げる=図表1 =。

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 様式1の「退院先」項目に則った退院先で地域医療機関先との連携を端的に表すのが転院状況だ。中でも、連携パス対象疾患でもある脳卒中そして大腿骨近位骨折の転院割合は高い。診療科でいえばそれぞれ、脳神経外科と整形外科だ。図表1 のA 病院(500床以上)においても、脳神経外科退院症例における転院割合は21.5% の37例(2015年4月~9月の6 か月間)となっている。

 地域連携パスの活用状況はどうだろうか。病院ダッシュボードの「チーム医療plus」のトップ画面では、図表2(14ページ) のような加算項目ごとの算定状況の概要が確認できる。「DPCケース分析」などの他機能と同様、比較対象病院とベンチマークをした際の自院の算定状況の位置づけが、信号機をイメージした色分けで表記されている(上記25パーセンタイル:青色、下位25 パーセンタイル:赤色、中間25~75パーセンタイル:黄色)。A病院では、退院調整関連11項目のうち、7項目が赤色で示されている。同一病床規模病院と比較して改善の余地が示唆される結果だ。

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 「チーム医療plus」の俯瞰マップをみると、連携パスである「地域連携診療計画管理料」が算定されているのは7例にとどまった(図表3)。転院症例37例に対して連携パスを使った転院は7例で、連携パスの運用割合は18.9%。当然、「チーム医療plus」のトップ画面では赤色に表示され、算定率は同一病床規模病院と比較しても低い。同じ転院であっても、連携パスを適応すると「地域連携診療計画管理料」として9000 円の収益が確保できる。一方、連携パスを適応しない転院の場合は、「診療情報提供料」と「退院時診療状況添付加算」で合計4500 円のみと半額の収益となる。

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 地域連携パスが運用されているのであれば、転院症例における連携パス症例割合を継時的に把握すべきだ。それと同時に、連携パスが適応できなかった要因分析を行おう。その上で、連携先に対し、連携パス適応基準の見直し交渉や実際に転院している医療機関との連携パス運用開始交渉等についての検討が必要になる。

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。