パス見直し検討すべきDPCコードTOP30、16年度診療報酬改定に対応、重要2疾患をベンチマーク

 2016年度診療報酬改定は、DPC制度開始から8度目の改定だった。今回もDPC制度の特徴である期間I、II、IIIの日数設計とその日当点の変更があった。今改定の特徴は、期間IIIの日数が30の倍数に延長されたことであるが、実際にパスの運用をするためには、やはり期間II(統計上の平均在院日数)が一つの目安となる。

 6月号の特集では、制度改定における日当点の変化を検証し、パスを見直すべきDPCコードのトップ30を掲載するとともに、中でも特にパスの改善が必要と思われる2つの疾患を選択してベンチマーク分析した。

約3割のコードが短縮

 まず、分析は以下のデータ条件において検証を行ったことを確認いただきたい。

◆2015年7月~12月データを使用
◆弊社保有のデータのうち、症例数の多い上位300コードを選択(GHCランク)
◆CCPマトリックス対象となった疾患は除外
◆副傷病分岐が変化したコードは以下のルールにて紐づけを行った
 (1)副傷病分岐が新設されたコード=新コードは副傷病なし
 (2)副傷病分岐が消滅したコード=旧コードは副傷病なし
◆在院日数は、DPC対象病棟の滞在日数を対象とする

 最初に、新旧コードの期間IIの変化を見て欲しい。図1は、新旧コードを比較し、期間IIの変化を検証した結果である。300コードのうち、約半数は変化がなく、3割のコードが短縮されたことが分かった。

図1 新旧コードの期間II変化

図1 新旧コードの期間II変化

 次いで表1では、GHCが保有するデータで症例数の多い上位300コード(GHCランク)のうち、期間IIが短縮されたコードの上位30を表示している。比較的、手術実施のコード、その中でも予定手術が多いものが多く含まれていることが分かる。パスの設定をすべて期間IIで設定している病院は、パスの変更を検討する必要があるだろう。

表1 期間IIが減少したコード

表1 期間IIが減少したコード

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GHC推奨、「パス見直しコードTOP30」

 続いて期間IIまでの日当点を検証する。日数が短縮になったコードはもちろん期間IIまでの日当点も減少しており、平均も1000点のマイナスになるが、分布としては、微増(1000点以内)のコードが一番多くなっている(図2)。また表2では、期間Ⅱまでの日当点比較をDPCコード単位で検証した。

図2 期間IIまでの日当点変化

図2 期間IIまでの日当点変化

表2 期間IIまでの日当点変化

表2 期間IIまでの日当点変化

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 以上のように期間II、日当点の減少を踏まえ、またパスという観点から見直しの検討が望ましいDPCコードの上位30コードを抽出した(表3)。

表3 GHC推奨の「パス見直しを検討すべきDPCコード30」

表3 GHC推奨の「パス見直しを検討すべきDPCコード30」

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「大腸がん+手術」のベンチマーク

 その中でも、予定入院の疾患であり、在院日数の短縮、期間IIまでの日当点の差で利幅が大きいという2つの観点から、今回は「大腸がん+手術」および「膝関節症+手術」の2つのコードを取り上げて、平均在院日数と医療資源投入量(包括になる部分の金額)のベンチマークを行った。他病院と比較して在院日数が長い、もしくは医療資源投入量が多い病院では、これを機会にパスの検証を行っていただきたい。

 図3は、「大腸がん+手術」コードにおける平均在院日数である。約6割の病院は期間IIよりも平均在院日数が下回っている。ただ、平均在院日数が下回っているだけでなく、その日数にバラつきがあるか否かも同時に検証することをおすすめする。

図3 大腸がん+手術 平均在院日数ベンチマーク

図3 大腸がん+手術 平均在院日数ベンチマーク

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 図4では、同一コードにおいて在院日数だけでなく、1症例当たりの医療資源投入量を検証した。特に注射や検査が投入量の差のポイントとなる。病院ダッシュボードにおいても、同一コードの分析において、注射では、術後抗生剤、輸液、アミノ酸製剤に、検査では特に術前検査の実施状況に着目している。注射では投与の有無、日数、後発品か否かが焦点となり、検査は予定入院なので術前の検査を入院後(術前日まで)に行っていないかどうか、という点がポイントとなる。

図4 大腸がん+手術 医療資源投入量ベンチマーク

図4 大腸がん+手術 医療資源投入量ベンチマーク

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「膝関節症+手術」のベンチマーク

 図5、6では「膝関節症+手術」において、同様のベンチマークを行っている。この疾患では、大腸がん以上に病院間の差が大きい。特に在院日数においては、リハの状況、退院基準、後方ベッドの有無が影響すると考えられる。

図5 膝関節症+手術 平均在院日数ベンチマーク

図5 膝関節症+手術 平均在院日数ベンチマーク

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図6 膝関節症+手術 医療資源投入量ベンチマーク

図6 膝関節症+手術 医療資源投入量ベンチマーク

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「病院比較」の時代に向けさらなる検証を

 今回の改定において、期間IIまでの日数と日当点は減少傾向となった。制度の変更は、個々のDPCコードの収益だけでなく、病院全体の各種係数にも影響を及ぼす。また、来年度からの病院指標公開により、今まで以上に病院が比較されるようになる。従って、改めて在院日数においては平均だけでなくバラつきが生じていないか否かを確認し、医療資源においてはより細かくベンチマーク分析するなど、病院ダッシュボードなどを用いて、現状のパスが最適か否かの検証を繰り返し行っていただきたい。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「コンサル視点が瞬時に分かる」をコンセプトに開発された次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」の営業統括も務める(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 八木 保(やぎ・たもつ)

yagi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。理学療法士、中小企業診断士。
名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業。大手商社にてヘルスケア業界におけるマーケティング商品開発、中小企業のコンサルティングを経て、入社。リハビリの質と生産性向上、コスト削減、財務分析、DPC分析などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のコスト削減プロジェクトや社外のCQI(Cancer Quality Initiative)研究会のサポートなどでも精力的に活動する(諏訪中央病院の事例紹介はこちら、津島市民病院の事例紹介はこちら)。