新設「急性期入院料2」を考える!

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 2018年度診療報酬改定で、一般病棟入院基本料(7対1、10対1)が廃止され、急性期一般入院料1~7に再編された。増えすぎてしまった急性期病床、特に旧7対1算定病院が、今回の再編を受けてどう動くかが注目されている。今回は2018年10月以降のDPCデータを通じて、届出状況、入院料変更に対する金額インパクト、そして急性期入院料1以外を選択肢とすることで得られる「知られざるメリット」を紹介する。

<分析条件>
分析期間:2018年10月~12月 分析病院数:703病院
分析対象:上記期間の退院症例


重症度、医療・看護必要度Ⅰの基準値30%に満たない医療機関は一定数存在

 図表1はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が保有する約300病院の「重症度、医療・看護必要度I」のデータ(2018年7月~12月)だ。基準値である30%は満たしているが、32%以下、つまり急性期一般入院料1の重症患者割合の基準がギリギリである医療機関は一定数存在していることに注目してほしい。

【図表1】 2018年7月~12月重症度、医療・看護必要度Ⅰ」
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10月以降の入院料届出状況は変化なし

 経過措置が終了した2018年10月以降における入院料の届出状況を確認しよう(図表2、図表3)。結論はほとんど変化なし。旧7対1一般入院基本料を届出した546病院のうち、急性期入院料2に変更した医療機関は1.5%の8施設にとどまった。また、旧10対1一般入院基本料を届出した115病院のうち、急性期入院料1に変更した医療機関は5.2%の6施設。入院料変更に伴う金額は、急性期1から急性期2に変更した場合、DPC包括金額が仮に10億円とすると約1160万円の減収となる(図表4)。

【図表2】 2018年10月以降 急性期病棟 入院料別病院数
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【図表3】 2018年10月以降 急性期病棟 入院料別病院数
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【図表4】 急性期一般入院料 機能評価係数Ⅰの差
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入院料2とは?

 急性期一般入院料は、「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす重症患者割合を「実績部分」の指標として、7区分で評価する仕組みだ。看護職員の配置は、10対1以上をベースにしている。入院料2は、この実績部分の基準が入院料1の次に高く設定されている。入院料1はこれまでの7対1入院基本料と同等であり、入院料4~7は10対1入院基本料に各看護必要度加算と同じ点数の入院料。残りの「入院料2と3」が、これまでになかった新規の点数設定となる。入院料2に関して特に重要な要件が以下2点。

・入院料1の届け出実績が必要(つまり、旧7対1入院料算定病院のみが対象)
・重症患者割合は、請求データで計算された「看護必要度II」を用いて評価

 この2つをクリアしないと、入院料2は届け出ができない。逆にこの2つをクリアしていれば、入院料1(1591点)に限りなく近い評価(1561点)を得ることができる(図表5)。しかも、入院料2は7対1の人員配置が必ずしも必要とされていない。そのため、この高い収益性を維持したまま、10対1などの人員配置で運用することができれば、より高い利益率を目指すことも可能だ。

【図表5】 一般病棟入院基本料の再編・統合イメージ
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余裕がでた人員配置で何をすべきか:上位の看護補助配置加算をとりにいく

 入院料1から入院料2に変更、つまり看護配置を7対1から10対1に変更した場合の余剰看護師をどの様に考えればいいのか。我々は「雇用を減らす」のではなく、「新しい働き方」を是非検討いただきたいと思っている。図表6~8は、それぞれ2018年10月以降 急性期看護補助体制加算、夜間急性期看護補助体制加算、看護職員夜間配置加算の入院料別病院数情報だ。

 今回の改定で大きく係数が引き上げられたものに、「急性期看護補助体制加算」および「看護補助加算」がある。看護職員の負担軽減、看護補助者との業務分担・協同評価が強化されたものだ。実は、入院料1(係数0.1000)+急性期看護補助体制加算4(75対1 係数:0.0328)の係数合計よりも、入院料2(係数0.0884)+急性期看護補助体制加算2(0.0479)の係数合計のほうが高くなることをご存じだろうか。前者は0.1328、後者は0.1363。多様な働き方が求められる中で、「バリバリ病棟でやっていくのは難しいけれど、病棟看護を継続して実践したい」と思う看護師の働き方の選択肢が増えることになる。

 「旧7対1一般入院基本料」から「入院料2+急性期看護補助体制加算25対1」に舵を切った医療機関が実在することも明記したい。図表9は、急性期看護補助体制加算、夜間急性期看護補助体制加算、看護職員夜間配置加算を最も手厚い体制にした場合のポテンシャル金額を示している。入院料変更に伴って余剰になった看護師を最大限に活かすことにより、3億円近くの増収インパクトの可能性を秘める医療機関も存在する。多様な働き方に対応できるだけではなく、係数による増収インパクトも見逃すことはできない(各病院情報は巻末に記載)。

【図表6】 2018年10月以降 急性期看護補助体制加算 入院料別病院数
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【図表7】 2018年10月以降 夜間急性期看護補助体制加算 入院料別病院数
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【図表8】 2018年10月以降 看護職員夜間配置加算 入院料別病院数
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【図表9】 加算算定ポテンシャル金額/年 ベンチマーク
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まとめ

 今回は、届出状況、入院料変更に対する金額インパクト、そして、急性期一般入院料1以外を選択肢とする考え方について説明した。看護配置加算関連にとどまらず、入退院支援看護師を拡大して退院支援関連を充実させたり、訪問看護ステーションを設立したりすることなども考えられる。入院料2は、今後の多様な医療ニーズをふまえ、健全経営を目指す病院にとっては非常に強力な選択肢であると考える。入院料1に固執せずに、入院料2の可能性を是非考えていただきたい。

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

snakamura テンプル大学教養学部経済学科卒業。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。全国の医療機関のコンサルティングを務め、改善事例多数。コンサルティング部門のチームリーダーのほか、若手の育成や人事担当なども務める。「LEAP JOURNAL」担当責任者。
解説を担当したコンサルタント 太田 衛(おおた・まもる)

snakamura 病床戦略、地域連携、DPC分析を得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、日本病院会が手がける出来高算定病院向け経営支援システム「JHAstis(ジャスティス)」の分析担当や「病院ダッシュボードΧ」の開発(関連記事『優先すべき集患の課題と対策を見える化、「地域連携分析」リリース』)も務める。