2018年度診療報酬改定では、「周術期等口腔機能管理」の加算対象手術が拡大し、医科歯科連携がより重要となった(図表1)。本加算は、周術期に適切な口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎などの術後感染の減少や、化学療法中の口腔粘膜炎の軽減、それに伴う平均在院日数の短縮や抗生剤等投薬量の減量などさまざまな効果が報告されている。加算算定率の最適化による経営面での改善幅も大きく、中には年間ポテンシャル4000万円というケースもある。
今回は、歯科診療報酬で請求する「周術期等口腔機能管理計画策定料・管理料」と医科診療報酬で請求する「周術期口腔機能管理後手術加算」について、手術症例における周術期口腔機能管理の可視化をしながら医療の質と経営の質向上について考えていこう。
周術期口腔機能管理に関わる収益インパクトは?
周術期口腔機能管理は、外来診療からスタートし、入院中にとどまらず、退院後の外来診療でも評価の対象期間となる。周術期等口腔機能管理計画策定料を算定した症例について、歯科医師が口腔機能の管理を行い、かつ、当該管理内容に係る情報を文書により提供した場合に、外来(管理料I)および手術または化学療法での入院中(管理料II・III)に算定可能な加算だ(図表2)。今回の改定では、人工股関節置換術・再置換術や造血幹細胞移植術が新たな加算対象手術となった。策定料および一連の管理料を漏れなく算定すれば1症例につき1万5700円の評価となり、各算定料を単発項目ではなく一連としての見方をすることが重要だ。
まず、自病院の周術期口腔機能管理に関わる収益ポテンシャルがどのくらいあるのかを認識しよう。2017年10―12月におけるMWJ登録722病院のDPCデータをもとに、歯科標榜病院と仮定し、「周術期等口腔機能管理計画策定料(300点)」「周術期等口腔機能管理料(I)入院前(280点)・退院後(190点)」「周術期等口腔機能管理料(II)手術前(500点)・手術後(300点)」すべて1回ずつ算定した場合のポテンシャル金額を試算した(分析条件:図表3、ポテンシャル試算:図表4)。
中央値は約300万円だが、年間1000万円以上の病院は100病院以上。4000万円以上のポテンシャルがある病院も存在した。金額上位はがんセンター、特定機能病院、がん拠点病院が多い。各病院はDPCデータ(医科データ)でポテンシャルを把握したうえで、歯科データの策定料・管理料の実態をみてほしい。
医科歯科連携の見える化には、周術期口腔機能管理後手術加算算定状況を知ること!
歯科医師による周術期口腔機能管理の実施後1か月以内に、対象となる全身麻酔手術を実施した症例には、医科として周術期口腔機能管理後手術加算(200点)が算定できる。そこで、対象となる全身麻酔手術を行った予定入院症例を対象(先述のKコード症例)として、ベンチマーク病院のプロットを行った(分析条件:図表5、プロット:図表6)。横軸が周術期口腔機能管理後手術加算算定率(分母:対象症例、分子:周術期口腔機能管理後手術加算査定症例)、縦軸は未算定症例にたいするポテンシャル金額(対象症例のうち、「周術期口腔機能管理後手術加算」未算定症例数が算定(200点)した場合の年換算金ポテンシャル金額)である。
(横軸)算定率(縦軸)未算定症例ポテンシャル金額(年換算)
722病院の平均算定率は24.5%、算定率60%以上は83病院だった。各病院の詳細データについては、周術期口腔機能管理に関わる収益ポテンシャルも含めて巻末資料を参照してほしい。
周術期口腔機能管理後手術加算が算定できていない施設は、下記3点を確認しそれぞれの対策が必要だ。
今号では、医科歯科連携がより重要となった「周術期等口腔機能管理」を取り上げた。外来時から一連の加算を漏れなく算定できる仕組みを構築することは、今回の改定の大きな柱の一つでもある「入院時支援加算」(外来時からの退院支援を評価する新加算)の算定率向上にも直結する。まずは現状を可視化し、どこに課題があるのかを確認するところから始めたい。