均てん化…

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 6月4日、阪神タイガースの原口文仁選手が、「復活のタイムリーヒット」を打ちました。原口選手は、昨年末の健診で大腸がんが発覚。年が明けてすぐの今年1月31日に手術、2月6日には退院し、そこから復帰を目指して、リハビリと練習を積み重ね、冒頭の劇的な復活を遂げました。

 息子とともに親子で阪神ファンである私は、原口選手のがん公表から復活まで、毎日のようにニュースで原口選手の病状や回復を気にかけていました。その一方、病院経営コンサルタントとしての私の視点では、発覚から手術、そして退院までの短期間のスムースな流れも目に留まりました。

 患者の状態、ステージなどにもよるのですが、現在、胃がん、結腸・大腸がん、肝臓がんの外科的手術の在院日数は、弊社保有のデータベースで見ると、入院してから退院まで10-14日となっています。DPC制度では、期間IIの上限は2週間強と定められています。

 また、術後のリハビリ実施率でもバラツキが確認できます。例えば、大腸がんの外科的手術において、約4分の1の病院では全症例でリハビリを実施していますが、全く実施していない病院もあり、病院あたりリハビリ実施症例割合は中央値が33%です。

 2006年に成立した「がん対策基本法」では、国が「がんの均てん化」と掲げたものの現状ではまだまだ均てん化までには至っていないといわざるを得ません。一コンサルタントとして、今後、患者のために医療の質の向上を目指して、均てん化のスピードアップに少しでも貢献したいと思っています。

 ちなみに、弊社では「がんの均てん化」を一つの目標として、100を超えるがん診療連携拠点病院の有志たちから成る「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」の運営をサポートしています。全国からがんの専門家たちが集まり、診療プロセスなどのディスカッションを行っています。今年8月には第14回の研究会を開催しますので、今回も熱いディスカッションになることを期待しています。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

snakamura 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。
早稲田大学社会科学部卒業。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、GHCが主催するセミナー、「病院ダッシュボードΧ」の設計、マーケティングを担当。若手コンサルタントの育成にも従事する。