今回のワンポイントレッスンでは、化学療法系のパス見直し方法について確認します。
「病院ダッシュボードχ(カイ)」のパス分析では、内科系、外科系のほかに、化学療法系という分類があります。こちらをクリックして化学療法系パスを確認してみましょう。
化学療法パスを分析する際の5つのポイント
化学療法パスを分析する際に注意しなければならないことは、以下5点あります。
②使用する化学療法剤を確定するレジメン(化学療法剤組み合わせ)自体を変える提案は難しい
③化学療法は同じレジメンでもファーストラインかセカンドラインかで治療内容が異なる。自病院がどこまでを入院で化学療法を実施するか決めた上で、他病院との傾向の違いを確認し、改善案を提案する必要がある
④化学療法の外来移行は病院の方針によって大きく異なるため、自病院の外来移行状況を踏まえた提案が必要
⑤レジメンによって制吐剤、G-CSF剤が異なるため、制吐剤ガイドライン、G-CSF剤ガイドラインも確認する必要がある
データ分析の結果を他の外科系、内科系と同様に解釈してしまうと、医師から「何もわかっていない」と協力してもらえないことが多いので、まずはガイドラインを押さえることが化学療法系パスの見直しには必須となります。
今回は、肺がん(化学療法:その他の化学療法)を取り上げてみます。
STEP1:パス名をクリックし、ロードマップを確認
分析したいパス名をクリックすると、他パス分析と同様に改善すべきポイントが色付きで表示されます。
STEP2:在院日数の分析
化学療法では在院日数の解釈は難しく、他病院において期間Ⅰに退院している症例が多い場合、他病院とファーストライン、セカンドライン、サードラインを、入院で行うか外来で行うか方針が異なる場合があります。そのため、在院日数の分布が違う時には、単純に短縮を提案するのではなく、分布状況を見せて、自病院の方針を確認しながら在院日数をどうすべきかを医師と話し合うべきです。
STEP3:制吐剤の分析
制吐剤について確認する際には、抗がん剤をクリックして、自病院で使用している抗がん剤の催吐性リスクを確認しましょう。
上記レジメンでは、ナベルビン(VNR)とブリプラチン(CDDP)が最も使われています。このレジメンは催吐性が高度リスクに該当します。
高度催吐性リスクに対する制吐療法として、下表のようになっており、自病院で使用している5-HT3受容体拮抗薬(アロキシ、カイトリルなど)とホスアプレピタント(プロイメンド)の組み合わせはガイドラインに則っています。(出典:日本癌治療学会がん診療ガイドライン)
ただ、他病院はパラプラチン(CBDCA)+ペプチドを使うレジメンが多く、催吐性中等度リスクであるためか5-HT3受容体拮抗薬のみの使用が多くなっています。非小細胞肺がんに対してレジメンの選択、制吐剤の選択が適切かをガイドライン及び他病院の選択レジメンを見ながら議論することが、化学療法のパス見直しの最重要点です。
STEP4:薬剤管理指導料の分析
化学療法剤は確実にハイリスク薬となるため、薬剤師による服薬指導は必須です。服薬指導の実施状況を確認するためには、「パス分析>全疾患>該当のDPCコード指定>検索」を行って確認しましょう。
下記のように6割の病院では100%の実施率であるにもかかわらず、自病院で78.6%であるならば、早急に対策を取る必要があります。
化学療法系パスの見直しには、治療そのものに関するさまざまな知識が要求され、パス見直しの中では最も難易度が高くなります。しかし、ガイドラインと「病院ダッシュボードχ」の数値を持って医師、薬剤師、看護師と話し合うことで、改善への糸口をつかむことができるはずです。