医療材料コスト削減、重要な再検討タイミングが到来、 「材料ベンチ」アンケート結果と3つの着眼点から学ぶ成功法則

 2016年度診療報酬改定でも、償還価格の高い特定保険医療材料の償還価格が引き下げられた。特に循環器領域、整形外科領域の医療材料の償還価格は大きな下がり幅だった。

 一般的に病床規模が大きくなると手術件数も多くなるため、病床規模が大きい医療機関ほど償還価格ベースの減収額が大きい。ただし、病床規模にかかわらず循環器内科、整形外科における手術件数が多い医療機関では特に減収幅が大きかったのではないだろうか(図表1)。

 2016年度の診療報酬改定から約1年が経過し、医療材料の購入価格に対する交渉も一段落したが、自治体病院などでは今年4月からの医療材料購入価格に対する契約締結が迫っており、既に交渉を開始している医療機関も見受けられる。医療機関により、4月~9月までの上半期、10月~来年3月までの下半期に分けて価格交渉を行う医療機関もあるが、このタイミングで再度価格交渉を行い、適切な購入価格を実現することは非常に重要である。

 そこで、今回はGHCの「材料ベンチ」のユーザーアンケート結果とコスト削減を成功させるための3つの着眼点を再確認する。

【図表1】手術材料費(特定保険医療材料)インパクトシミュレーション (年換算、2014年度制度vs2016年度制度)

【図表1】手術材料費(特定保険医療材料)インパクトシミュレーション
(年換算、2014年度制度vs2016年度制度)

◆アンケート回答病院用※閲覧にはパスワードが必要です

◆アンケート未回答病院用

 病院ダッシュボードのオプションサービスとしてリリースした「材料ベンチ」を導入した医療機関からは、「ある領域で数百万円の削減効果があった」「他病院における購入価格が参考になった」といった声があった反面、材料担当部署の人材不足や日常業務の繁忙さなどの理由から価格交渉などのコスト削減活動が思うように進められていないとの声が聞こえてくる。

 そのため、医療材料コスト削減の取り組みを「見える化」することで、今後の削減活動のヒントにしていただきたいとの思いから、「材料ベンチ」導入医療機関を対象にアンケートを実施した(アンケートに回答いただきました「材料ベンチ」導入医療機関に対して別途アンケート結果をお送り致します)。

 有効回答のあった医療機関の削減金額(年換算)は、約50万円から4000万円弱と幅があった。医療材料の領域別に確認すると、主に脳神経外科領域、泌尿器領域等の医療材料を含む「その他の医療材料」の削減金額が最も多く、次いで「循環器領域」、「心臓血管外科領域」と続く(図表2)。回答いただいた医療機関の病床規模や機能は異なるので一概には言えないが、「材料ベンチ」を活用し、削減成果をあげた医療機関では償還材料、特に一製品の価格が高い循環器領域のコスト削減を実現したインパクトが大きいことが分かった。

【図表2】アンケート結果に基づく領域別削減金額割合

【図表2】アンケート結果に基づく領域別削減金額割合

 医療材料コスト削減を進める上で、(1)適正な市場価格の把握(2)的確な価格交渉(3)院内の協力体制―が必要不可欠だ。まずは、自病院における年間購入金額の大きい上位の領域を確認し、「材料ベンチ」を活用することで適正な市場価格および自病院の立ち位置を把握した上で、(2)的確な価格交渉、(3)院内の協力体制――を院内で根付かせていくことが削減成果を上げるための近道と言える。

 2018年度には医療・介護のダブル改定が行われる。消費増税延期などの影響などを考えると、次回の改定はかなり厳しいものになることが予想される。コスト削減は生産活動をせずに利益を生み出すことが可能だ。4月からの医療材料の契約価格を決定する今のタイミングで、改めて自院の医療材料コスト削減に取り組んでいただくことをお勧めする。

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解説を担当したコンサルタント 本橋 大樹(もとはし・だいき)

motohashi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
米国ウィスコンシン大学経済学部卒業。外資系医療機器会社、医療系コンサルティング会社を経て、入社。医療データサイエンティストの育成や病床機能分化の策定、医療材料や委託コストの削減などコスト削減ソリューション全般を得意とする。足利赤十字病院(事例紹介はこちら)、津島市民病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行うほか、コスト削減に関する社内の新規プロジェクトチームのリーダーを務める。