2018年度診療・介護報酬の同時改定から間もなく半年が経とうとしている。
診療報酬改定の目玉の一つとして入退院支援が取り上げられたことで、多くの医療機関で改めて体制構築が検討された。入退院支援は、PFM(Patient Flow Management)というキーワードとともに、今後さらなる進化を遂げることが予測される。
今回は入退院支援について診療報酬改定後にどのような変化があったのか、また、各医療機関での取り組みにはどのような違いがあるのかを分析した。また、入退院支援対策を再検討する上で役立つ「自病院の優先検討事項チェックシート」も併せてお届けするので、ご確認いただきたい。
入退院支援加算を算定する医療機関が増加
今回の診療報酬改定に伴い、退院支援加算の名称が「入退院支援加算」となり、退院困難要件に生活困窮者等が追加された。各医療機関における入退院支援への取り組みに変化はあっただろうか。
図表2は入退院支援加算の算定施設の変化を月別で追ったものである。分析データの算出期間は2018年1月~6月、538件の医療機関を対象とした。
2018年1月では96.4%の医療機関が算定していた入退院支援加算(算定時は退院支援加算)だが、2018年6月には98.1%に増加している。また、そのうち入退院支援加算1を算定している医療機関が3.5ポイント増の78.3%へ上昇しており、診療報酬改定を機に入退院支援への取り組みを強めた医療機関が増えたことが示唆される。
また、今回、関連加算として新設された「小児加算」(分析データ2018年1月~6月538件)と「入院時支援加算」(分析データ2018年1月~6月538件)についても、図表3、4で示す通り、2018年4月以降、右肩上がりに増加している。
各医療機関で取り組みに差
「入退院支援加算算定」施設が増加する中、各医療機関における取り組み状況に差はあるだろうか。
65才以上で一定期間入院が必要と推察される症例を対象にした算定率を図表5に示す(分析データ2018年4月~6月577件)。平均値・中央値ともに40.9%であったが、90%を超える医療機関から10%を下回る医療機関まで、算定率は様々であった。無論、マンパワーの違いもあるが、より効率よく仕組み化することで算定率を上げていくことが重要だ。
一方、15才未満への算定は一部の医療機関のみに留まっている(2018年4月~6月577件、図表6)。対象者の有無確認、スクリーニングのタイミング等運用方法を見直したい。
入院時支援加算算定率が100%の医療機関も存在
今回の改定で新設された入院時支援加算の算定医療機関が増加傾向(2018年6月時点で約4割)は前述のとおりだが、各医療機関での算定率はどうだろうか。
入退院支援加算を算定した症例のうち、予定入院であった症例を対象に算定率を確認すると、平均値26.6%、中央値19.2%であった。(分析データ数2018年4月~6月240件、図表7)注目したいのは、僅かではあるものの、100%という医療機関の存在である。予定入院の入院前スクリーニングを仕組み化することで、漏れのない算定が可能であることが示唆される。
一方、予定入院かつ入退院支援加算算定症例に漏れなく算定したとしても、その対象者自体が少ない場合、算定件数は伸び悩むことになる。入退院支援加算そのものの算定件数は当然のことだが、そのうち予定入院症例にどの程度算定しているかを併せて考えることが肝要である。
各医療機関によって、予定入院症例を対象としているか、予定外入院を対象としているかは様々であるが(分析データ数2018年4月~6月577件、図表8)、予定入院症例については、可能な限り入院前から支援を開始していくことで、入院時支援加算算定件数の向上を試みたい。
改定から半年が経った今、見直したいこと
今回の分析の巻末資料として、各医療機関の個別の数字を示している。自院IDを確認のうえ、数値をご覧いただきたい。
「①入退院支援加算算定率」「②入退院支援加算算定症例のうち、予定入院の割合」「③入退院支援加算算定症例かつ予定入院症例に対する入院時支援加算算定率」のバランスにより、優先的に見直したい事項は異なってくる。
添付資料には、「現時点で算定可能な入院時支援加算ポテンシャル金額/年」と、「予定入院症例を対象に入退院支援加算算定率が10%上昇した場合の入院時支援加算増加金額/年」を示した。入院時支援加算を算定しているということは、そのための人材を確保しているということである。算定件数が安定・増加することで、さらに質の高い入退院支援体制づくりに繋がることが期待できる。