2018年度診療報酬改定で「入院時支援加算」(200点)が新設された。予定入院症例に対する、入院前からの支援を評価する加算である。入院時支援加算を算定するには、関連加算の算定が見込める要件が複数あり、中でも特別食加算は医療の質はもちろん、経営への影響が大きいため、加算算定までの運用を確認しておきたい項目だ。
今回は経営への影響が大きい代表的な3つの特別食に的を絞り、最適な加算算定をすることで、どれだけの増収ポテンシャルが見込めるかの分析を行った。結果、特別食加算を算定するために必要な入院前の対応をしっかりと行うことで、最大で300万円超の増収ポテンシャルがあることが判明した。
また、本稿では特別食加算に限らず、入院時支援加算に関連する加算の最適化を行うため、予定入院患者に対する外来支援時に把握しておくべき「6つの質問+情報共有」の確認シートも掲載している。
入院時支援加算の具体的な算定要件を見ると、入院の予定が決まった患者に対し、入院中の治療や入院生活に係る計画に備えて、入院前に▼身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握▼褥瘡に関する危険因子の評価▼栄養状態の評価▼持参薬の確認▼入院中に行われる治療・検査の説明▼入院生活の説明▼退院困難な要因の有無の評価――を含めた支援を行い、「入院中の看護や栄養管理等に係る療養支援計画」を立て、患者・関係者と共有することとなっている。
予定入院症例に対して、把握したい情報を「外来時に把握すべき『6つの質問+情報共有』」として図表1にまとめた。
今回は、この中から栄養管理に関する内容の特別食加算を取り上げる。以下が分析条件の詳細である。
特別食加算は、入院前に併存症の把握ができていれば、入院初日から漏れなく算定が可能である。治療食が必要な症例に入院時からしっかりと特別食を提供することは、医療の質の点でも重要だ。対象となる特別食の中でも、特に、腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食(流動食を除く)、貧血食、膵臓食、脂質異常症食、痛風食、てんかん食などを、入院日から漏れなく提供するためには、外来で慢性疾患の併存症の把握が欠かせない。
経営的側面からみると、特別食加算は1食76円(1日3食の場合、228円)の算定が可能であり、多くの食数が生じることを考えるとインパクトも大きい(図表2)
今回は予定入院が多く、特別食加算の算定に病院間の差が大きい3つの診療科をベンチマーク分析した。
図表3は、「外科の消化器系疾患・手術あり」の特別食の算定状況を比較している(対象:507病院)。中央値:41.7%に対して(グリーン着色エリアは上位25%、中央値、下位25%)算定率が90%を超える病院がある一方、算定率が10%未満の病院も確認される。
図表4は、「整形外科の筋骨格系疾患、外傷・手術あり」中央値18.4%、図表5は、「泌尿器科の腎・尿路系疾患・手術あり」中央値23.7%の特別食の算定状況である(図表4対象:494病院、図表5対象:381病院)。20%前後の算定率が多いが、50%を超える施設もあり、施設間の算定率の差が大きい。
50%算定時の算定ポテンシャルは、「外科の消化器系疾患・手術あり」だけで、ポテンシャルの最も大きい病院は年間約80万円、「整形外科の筋骨格系疾患、外傷・手術あり」だけで年間約190万円、「泌尿器科の腎・尿路系疾患・手術あり」だけで年間約50万円の状況。これだけで合計320万円の増収ポテンシャルだ。
貴院の算定状況はどうだろうか。管理栄養士が積極的に医師に働きかけができているだろうか。他病院と比較して算定率が低い場合は、慢性疾患の把握が不十分な可能性がある。その場合は、院内の入院時併存症を把握するためのルールがどうなっているか、確認したい。
予定入院症例に対しては、入院前に管理栄養士、看護師による面談により慢性疾患の把握を行う。無理な場合は、入院時に病棟看護師が慢性疾患の把握を行い、入院初日から医師が特別食のオーダーを出せるよう、多職種連携を図りたい。