病院職員の生産性を高める3つの手順、 経営視点で考える「病院の働き方改革」

DBχワンポイントレッスン用見出し

 最近、「働き方改革」という言葉が何かと話題だ。今後、労働人口が減少していく中で、1人ひとりの生産性を上げていかなければ、社会は回っていかない。診療報酬で医師・看護師等に対する業務負担軽減のための補助者配置評価が進んでいる一方で、病院勤務の医療従事者確保に苦戦しており、働き方改革が急務と言える典型的な業界になっている。病院経営が成り立たなければ、地域医療を守り続けることはできない。

 今回は、「病院ダッシュボードχ(カイ)」の「チーム医療Plus」の新機能「生産性分析」を活用して、メディカルスタッフの生産性を強化する方法を3つの手順に分けて紹介する。

 病院経営にとって、職員1人ひとりの生産性をあげることは非常に重要だ。GHCでは、医療の質を上げるとともに、そのためのコストを下げることを「医療の価値」と位置づけ、以下の方程式で表現している。

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 例えば、これをメディカルスタッフの生産性に当てはめると、

・医療の質=より多くの患者に、専門職が支援すること
・医療のコスト=適正な人数で、医療の質向上を達成すること

 と考えることができる。

 下記3つのステップで、的確かつ定期的にPDCAサイクルを回していくことで、メディカルスタッフの生産性は飛躍的に向上するだろう。

ステップ1 まずは自院の「1人あたりの生産性」の立ち位置を把握する

 チーム医療PLUSの生産性分析では、「薬剤師」「管理栄養士」「療法士」に関して、➀人数/100床、②各職種が算定すべき主要な加算の合計算定金額/人(例:薬剤師であれば薬剤管理指導料)、③各職種が算定すべき主要な加算の合計算定件数/人――について、他病院とのベンチマーク分析ができる機能だ。本稿では薬剤師を例に、その分析結果を読み解いていこう。

 下記グラフより、A病院の薬剤師の常勤人数は中央値よりも高いことがわかる。一方で、1人あたりの薬剤管理指導料算定金額や件数をみると、他病院に比べかなり改善の余地があり、他病院中央値となった場合の増収ポテンシャルも大きい。

 筆者がコンサルティングをしている中で事務の方からよく聞く話が、「メディカルスタッフの生産性向上を考え、より加算算定件数を強化してもらおうと算定率ベンチマーク分析資料を持っていったら、“忙しい”“もう限界までやっている”と断られてしまった」というものだ。どうすればいいのか。

 算定率のベンチマーク分析資料のみでは、確かに“もう限界までやっている”に関して言及ができないため、これ以上先に進めないこともあるかもしれない。しかし、「1人あたり」にまで落とし込めば、本当に“もう限界までやっている”のか、ベンチマーク分析が可能だ。1人あたりという指標は少し繊細であるため、スタッフに対して分析資料の提示方法は慎重に行ってほしいが、強力な武器になる。まずは状況を理解しよう。

【図表】 薬剤師1人あたり月あたり薬剤管理指導料算定金額

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ステップ2 立ち位置から、目標数値を決定し、「1人あたり」に落とし込む

 ステップ➀にて自病院の立ち位置を把握したら、他病院の値から「1人あたり」の目標数値を決めていこう。例えば、A病院の場合、現在算定件数は20件/人である。まずは他病院中央値35件を目指したいところだが、今のほぼ2倍となってしまうため、かなりストレッチゴールだろう。目標を高く掲げすぎてとん挫してもモチベーションを下げてしまうため、例えば「まずは1.5倍頑張ろう」ということで30件/人を目標数値としてはどうだろうか。仮数値が決まったら、スタッフと相談して目標数値を掲げてみてほしい。目標数値が決まると、非常に具体的であり職員は動きやすくなる。すでに達成できているスタッフがいるかもしれない。そうしたらそのスタッフをモデルケースとするのはどうだろうか。

ステップ3 目標数値の進捗管理を行い、「なぜ出来たか」「なぜ出来なかったか」を議論する

 ステップ②で目標数値が決まったら、あとは実行あるのみだ。毎月数値を確認していこう。そして数値が変わってこない場合、「なぜ変わらないか」を徹底的に議論することが重要だ。

 筆者のクライアント病院でも、とにかく毎月目標数値に対する現状数値を経営会議で追っている。毎月確認し、工夫を出し合えば、数字は必ず上がってくる。上記3ステップを通じた生産性強化によって、医療の質と経営の質向上を目指して頂きたい。

解説を担当したコンサルタント 澤田 優香(さわだ・ゆうか)

sawada 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのアソシエイトマネジャー。看護師、保健師。
聖路加看護大学卒業後、集中治療室の勤務を経て、入社。看護必要度分析、看護業務量調査、DPC別診療科検討、病床戦略分析、マーケット分析などを得意とする。自由分析ソフトを用いた分析では、社内で右に出るものはいない。多数の医療機関(東京医科大学病院と関東中央病院の事例紹介はこちらこちら)のコンサルティングを行うとともに、社内のアナリスト育成や「病院ダッシュボードχ」の開発でも中心的な役割を担っている。