戦略的集患:貴院では、 どのような患者を集めるべきか?

leapJ_tokusyu

 今後医療機関が生き残るためには、安定した医療需要に応える体制を整備し、維持することが肝心である。日本の医療ニーズが少子高齢化と共に高まってきており(図表1)、患者数が増えてくる一方で、在院日数の短縮、医療技術の進歩、外来化の促進などで、急性期入院医療需要は減少している。今回は、病院経営に資するような医療提供体制を整えるために、戦略的な集患対策について各病院の現状を改めて確認しよう。

【図表1】 日本の人口の推移

出典:全日本病院協会(https://www.ajha.or.jp/guide/28.html#p2

 代表的な経営指標の一つである「収益」の高い医療機関は、どのような患者を受け入れているのだろうか。また、経営の持続可能性を計る「利益」(本稿では、簡易化のため「粗利」で示す)が高い施設はどのような患者構成なのだろうか。院内の経営方針や強みに即した集患戦略を策定するに当たり、DPC病院全体の傾向から示唆を得よう。

<分析条件>

データ期間:2018年10月~2019年9月退院症例 
対象施設数:902病院
予定入院の定義:様式1「予定・救急医療入院」が1$$
緊急入院の定義:様式1「予定・救急医療入院」が200、3$$
DPC収益の定義:DPC包括点数合計 × (基礎係数+機能評価係数Ⅰ+機能評価係数Ⅱ) + 特定入院料加算分 + DPC出来高算定分 + 入院期間Ⅲを超えた出来高算定時金額 ※単位:円
粗利の定義:DPC収益(医療機関別係数加味)- 薬剤費(薬価) - 材料費(償還材料に限る。償還価格) ※単位:円



収益×予定入院割合の視点

 まず、自院の現状を確認しよう。
 図表2に表示されている通り、1ヶ月あたり100床あたり収益の中央値(134,173,617円)および予定割合の中央値(48%)で分析対象医療機関を4つの群に分けた。予定割合は、各医療機関の経営方針のみならず地域のニーズも大いに関係していることから、割合の高低を評価しているわけではないことを記しておきたい。
・高収益・高予定割合群(赤):
・高収益・低予定割合群(ピンク):
→更なる安定収益に向けて、マネジメントしやすい予定症例が伸ばせるか。
・低収益・高予定割合群(濃い灰色):
・低収益・低予定割合群(薄い灰色):
→紹介・救急への取り組みへの強化と合わせて病床機能分化も検討したい。

【図表2】医療機関別 1ヶ月あたり100床あたり収益(縦軸)および予定割合(横軸)

 図表3では1症例あたりの「粗利」をベンチマークしている。高収益グループの1症例あたりの平均粗利は、高予定割合群の方が低予定割合群より約50,000円高い。ベンチマークの分布を見ても、高収益・高予定割合群(赤)がベンチマーク表の左側に集約している。

 個々の医療機関を見てみると、高収益の医療機関の粗利が必ずしも高いとは限らない。ベンチマーク表の右側に位置する高収益群の医療機関もわずかながら存在する。医療資源の投与状況や、疾患構成など医療機関別の特徴もあると思われる。大切なのは、集患戦略を考える際、収益だけではなく粗利の観点も考慮する必要があるということだ。

【図表3】1症例あたり粗利ベンチマーク

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